この記事は日経ビジネス電子版に『最近「ゆるブラック」増えてない?覆面エージェント3人が語る』(11月2日)として配信した記事などを再編集して雑誌『日経ビジネス』11月15日号に掲載するものです
働き方改革を推し進め、いわゆる“ホワイト企業”が増えたはずの日本の産業界。だが一部の企業の現場からは「残業も減ったが、なぜかやる気も減った」との声が届く。そんな会社は、「ゆるブラック企業」の可能性が高い。

「入社2年目に会社が働き方改革を始めた時は『これでさらにいい会社になる』と期待しました。実際、長時間労働の是正など改革の多くは成功したと思います。でも不思議なことに、その頃から『この会社にいることは自分にとってリスクなのでは』と考えるようになったんです」
誰もが名を知る大手化学メーカーA社を昨年退社し、今は別の企業で働く京子さん(27歳、仮名)はこう話す。
2016年に都内の有名私立大学の法学部を卒業。「日本の強みであるものづくりに関わる仕事がしたい」と製造業に的を絞って就職活動を展開し、最初に内定をもらったのがA社の総合職だった。
配属は東京本社の人事部。先輩たちのサポートを受けながら、新卒採用や中途入社向け研修の企画・実施に携わった。そのほかにも、社員の労務管理作業などを担当。最初は作業に手間取り、先輩と遅くまで残業することもあったが、その分、社内には十分な活気があった。
働き方改革で芽生えた違和感
働き方改革が本格化したのは、ちょうど仕事を一通り覚えた頃。「安全で明るい職場」をスローガンに、サービス残業や休日の作業を前提とした資料作成、休日メールなどを削減するため、様々なルールが導入された。「やりがいを高める上でとてもいいことだ」と最初は京子さんも思っていたという。
が、改革が軌道に乗るにつれて違和感が芽生え始める。何としても午後6時には仕事を終わらせ、会社を退社しなければならない。「残業は1分単位で管理される。この管理があまりに厳格で、乱暴に言えば“仕事はどうでもいいからとにかく早く帰れ”という上からの意思をひしひしと感じた」と京子さん。部下の有給休暇取得率などが組織長の人事評価に反映されるという新ルール導入の“成果”だった。
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