この記事は日経ビジネス電子版に『黒子のJAL、融合のANA 成長の鍵を握るLCC戦略の成否は』(11月1日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』11月8日号に掲載するものです。
コロナ禍でビジネス需要が蒸発し、レジャー・帰省需要に強いLCC事業に両陣営とも注力する。コードシェアなどで連携を強化するANAHDと、放任して果実を取るJAL。グループ内で、それぞれが強みを失わずにシナジーを生むブランド戦略が求められる。
ずっと先のことだと目を背けてきた未来を、突然、眼前に引き寄せて見せる。航空業界もまた、コロナ禍のそんな特質と無縁ではない。
人口減少社会である日本で航空需要を伸ばすには、それまで空路を利用しなかった層を開拓するほかない。ITの発展によってテレワークやオンライン会議が普及すれば、FSC(フルサービスキャリア)が得意とするビジネス需要は細っていく。帰省やレジャーなどの需要を取り込まなければ生き残れない──。コロナ禍による需要蒸発は、航空業界がいずれ向き合わなければならなかった課題の進展を加速させた。
これらの課題に対する打ち手の一つがLCCだ。低価格を武器とするLCCは、これまで航空を利用してこなかった層の開拓や、帰省・レジャーなどの非ビジネス領域の需要に強い。ANAホールディングス(HD)と日本航空(JAL)の両陣営が戦術展開の要としてLCCとの連携を加速させている必然がここにある。
日本のLCC元年はジェットスター・ジャパンやピーチ・アビエーションが相次いで運航を始めた2012年。7年間で日本の国内線旅客に占めるLCC利用の割合は10.6%に達した。だが国際的に見れば東南アジアで56%、北米でも30%に上る。残されたフロンティアに、両陣営はどう挑むのか。
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