世界の石油メジャーが歯ぎしりをしながら見つめる欧州企業がある。洋上風力のオーステッドと再生燃料のネステだ。共に世界最大手に躍進した。小国にある両社は、どうやって世界で勝てるビジネスモデルをつくり上げたのか。


デンマークの首都コペンハーゲンの中心部から北西に向かう幹線道路は北欧らしい針葉樹に覆われていた。車で20分ほど進むと洋上風力発電事業の世界最大手、オーステッドの本社が見えてくる。3階建ての飾り気のないビルはエントランスも小ぶりで、質素な印象だ。

そのオーステッドに今、世界の熱い視線が注がれている。市場が急拡大する洋上風力発電市場で圧倒的な存在感を誇っているからだ。これまで世界の海に1600基以上の風力発電機を設置し、7.6ギガワット時(GWh)もの発電量がある。原子力発電所7基分に相当し、デンマークの総人口を超える1500万人分の電力供給ができる規模だ。

陸上風力や太陽光発電などの再エネも手掛け、カナダのコーポレートナイツ社が実施した2020年のサステナビリティ企業ランキングで世界1位になった。同社のクリーンな電力は、世界の大手企業を引き付ける。米アマゾン・ドット・コムや台湾の半導体受託生産世界最大手TSMCなどに長期契約で再エネを供給する。
旺盛な需要を受け、業績は右肩上がりだ。20年12月期の最終利益は167億デンマーククローネ(約3000億円)で、売上高純利益率は32%に達する。10月21日時点の時価総額は3848億クローネで、東京電力ホールディングスの10倍以上だ。
なぜ、世界中に多くのエネルギー会社がある中で、小国デンマークにあるオーステッドが再エネで突出した実績を上げているのか。本社や洋上風力発電所、風力発電機の工場、出荷の港を訪れ、その秘訣を探った。
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