2050年の脱炭素実現に向けて、関連産業に巨額の投資が必要とされる。それを受け風力発電や太陽光発電、電気自動車など脱炭素市場が急拡大。かつて市場を席巻した日本勢は事業改革に遅れ、急速に存在感を失った。
年間4兆ドル(約450兆円)の投資が必要だ──。
国際エネルギー機関(IEA)は10月13日に公表した世界エネルギー見通しで、脱炭素に必要な投資額として衝撃的な数字を示した。同時に世界のクリーンエネルギーに対する移行が、「あまりに遅い」と糾弾した。
各国政府に厳しい指摘となる一方、沸き立ったのは市場関係者だ。IEAは1970年代の石油ショックを機に経済協力開発機構(OECD)加盟国によって設立された組織で、もともと再エネ導入に積極的である。とはいえ、年間に必要な投資額を従来見通しの3倍と見積もった。今後の市場拡大を期待し、風力発電や再生燃料を手掛ける会社の株価は、IEAの発表以降に急上昇した。
IEAがこのタイミングで、衝撃的な見通しを示したのは理由がある。10月31日から英グラスゴーで第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されるからだ。厳しい削減義務を負うことを避けたい政府にくぎを刺し、CO2削減の実効性を高めようとしている。自ら今回の世界エネルギー見通しを「COP26のガイドブック」と位置付けた。
95年の第1回から毎年開催されていたCOPだが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、初めて延期された。それだけにホスト国である英国は並々ならぬ意欲を燃やしており、オンラインではなくリアルでの開催を推進。ジョンソン英首相は、歴史的な内容での合意に意欲を見せている。
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