この記事は日経ビジネス電子版に『風立ちぬ次期戦闘機「F-X」 国産信仰でも英米迎合でもない針路』(10月20日)、『名を捨て実を取れるか 戦闘機エンジン、海外に扉開く好機』(10月21日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』10月25日号に掲載するものです。

日本が2035年ごろの配備を目指す次期戦闘機「F-X(F-3)」の開発が始まった。防衛装備庁や主幹メーカーの三菱重工業にとっては悲願の「国産主導」の開発となる。だが、F-Xは高度なシステムの固まり。自前にこだわりすぎれば“離陸”が危ぶまれる。

<span class="fontBold">F-Xはまだベールに包まれたままだが、2035年ごろの配備を目指している</span>(写真=アフロ)
F-Xはまだベールに包まれたままだが、2035年ごろの配備を目指している(写真=アフロ)

 10月初旬、コロナ禍にもかかわらず英国から羽田空港に降り立った一団があった。ロールス・ロイスやBAEシステムズなど英国の名うての航空・防衛大手の面々だ。

 彼らは英政府が進める次期戦闘機構想「テンペスト」の担当者たち。東京・市ケ谷の防衛装備庁をはじめ、IHIの瑞穂工場(東京都瑞穂町)や三菱重工の大江工場(名古屋市)などを巡った。目的は開発が始まったばかりのF-Xへの参画を確実なものにするためだ。

 F-Xは現在の主力戦闘機「F-2」の後継に当たる。開発陣を率いる三菱重工など日本の航空機産業にとって悲願の「国産主導」(装備庁)となる。

 1987年、日本はF-2を国産として開発する方針を掲げた。だが、戦闘機は電子機器や素材など最先端技術の固まり。日本が技術大国になることを恐れた米国から横やりが入り、日米共同開発に持ち込まれた。深刻な対日貿易赤字を抱える米国の“ガイアツ”もあった。

 もっとも、共同開発とは名ばかり。飛行システムのソースコードなど米国からの技術情報の開示はほとんどなかったばかりか、最新鋭のレーダーなど日本発の要素技術は次々吸い取られ米国の戦闘機に用いられた。

 空自はF-2のほか米国製の戦闘機を運用する。ステルス戦闘機「F-35」は米国の対外有償軍事援助(FMS)で購入。「F-15」とともに実質的に機体は米国防総省の管理の下に置かれ、グレードアップしようにも日本は自由に改修できない。

日本の戦闘機は米国製やライセンス生産が主流
●日本の戦闘機の変遷
<span class="fontSizeL">日本の戦闘機は米国製やライセンス生産が主流</span><br><span class="fontSizeS">●日本の戦闘機の変遷</span>
(写真=右上:新華社/共同通信イメージズ、他3点:航空自衛隊提供)
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 F-2で辛酸をなめて約35年。臥薪嘗胆(がしんしょうたん)とばかりに三菱重工の元にはIHIや川崎重工業、SUBARU、三菱電機など計7社が国産の旗の下に集まった。開発人員は総勢200人。根城となる三菱重工の小牧南工場(愛知県豊山町)の一角では、機体やエンジンの構想設計などに白熱した議論を交わす。

 米国のように戦闘機に関する実戦データを持たない日本にとって「国産主導」はどこまで現実味があるのか。それは装備庁からF-X開発の支援候補に選ばれた戦闘機メーカーの雄、米ロッキード・マーチンとの関係から見て取れる。

ロッキードと思想の隔たり

 「スーパーコンピューターを使った解析結果で性能が十分か判断しよう」「デジタルツインであれば構造物の試作はいらない」。議論の席上、ロッキードからはこうした提案が次々と上がる。だが、三菱重工は「形状や構造など物理的なモデルを通して試験データを積み上げないと性能が分からない」との持論を示す。

 デジタルでのモノづくりがコストと納期を決める時代だが、両者の設計思想には隔たりがある。

 無論、三菱重工も徹底したデジタル思考に真っ向反対しているわけではない。ただ、戦後、ゼロベースで戦闘機を開発した経験がない分、デジタルデータと実際のモノの試験データとを突き合わせなければ、次のステップへは進めないというわけだ。

 「ロッキードには座学を通してアドバイスをもらうことだけにとどめたい」「設計への全面的な参加は避けたい」。今夏、プロジェクトが走り始めたころ、開発陣の間でこうした発言が出るようになった。

 事業が凍結された国産ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」で色濃くにじんだ自前主義が国産へのこだわりと重なってくる。

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