この記事は日経ビジネス電子版に『バラマキより「あなたに給付金」 デジタル庁、所得データの壁破る』(10月4日)、『登録12億人のインド版マイナンバー グーグル元技術者と共に「全員IT」』(10月4日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』10月11日号に掲載するものです。

岸田政権が挑む課題の一つがデジタルトランスフォーメーションの加速だ。9月発足のデジタル庁を中心に、数々の難題を解決しなければならない。個人のデータを活用できるか否かがこの国の将来を左右する。

<span class="fontBold">デジタル庁の発足会見で、平井卓也デ ジタル相(当時、右から2人目)は、誰一人 取り残さない社会をつくると述べた</span>(写真=竹井 俊晴)
デジタル庁の発足会見で、平井卓也デ ジタル相(当時、右から2人目)は、誰一人 取り残さない社会をつくると述べた(写真=竹井 俊晴)

 10月4日、自民党の岸田文雄総裁が第100代の首相に就いた。新型コロナウイルス対策や経済対策など対処しなければならない課題は山積みだ。それらの課題の一つが、菅義偉前首相が力を注いだデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。

 9月1日に発足したデジタル庁を中心に、後れを取っているといわれる日本のDXを加速できるのか。そのために乗り越えなければならない「壁」は多い。その一つが名前の読み仮名の問題だ。

46年前にも議論

 2020年春、コロナ禍で収入が激減した国民に向けて、当時の安倍晋三首相は特別定額給付金の給付を発表したが、この過程で、一部遅れが発生した。原因の一つになったのが、戸籍の読み仮名だ。

 日本では氏名の読み方を正式には決めてこなかった。民法や戸籍法に「氏」の規定はあるが、読み仮名の規定はない。国は「よみかた」をつけた出生届の標準様式を通達したが、あくまで「住民基本台帳事務処理上の利便のために設けている」だけだ。

 その結果、カタカナ表記の氏名で口座を管理する銀行と自治体の間で読み仮名が一致しないなどの事態が起こり、個人を照合するのに手間取ってしまった。

 デジタル庁の上仮屋尚参事官は「戸籍で使用できる漢字の数は膨大で、デジタル化に向いていない。個人を特定するのが大変という問題は出てきていた」と話す。

 こうした課題を受けて、20年末にまとめられた「デジタル・ガバメント実行計画」では読み仮名の法制化検討を明記。上川陽子法務相(9月時点)は今年9月、法制審議会に法制化を諮問した。

 実は、「読み仮名問題」は、40年以上前から議論されてきた。1度目は1975年の民事行政審議会の答申。出生届などの氏名にふりがなをつけることは、「読み方が客観的に明白となり、便利をもたらす」とされながら、多数意見は「漢字の読み方にそぐわないふりがな」や「後日の訂正方法」など実務上の問題が起きるため今後の検討を待つとされた。

 続く81年の答申では「社会生活上便利」だが「無原則に読み方が登録されると混乱が生ずる」として保留された。2017年の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」でも、「読み仮名の収集方法はどうするか」といった複数の課題が「解決は困難」として、三たび、先送りされた。

続きを読む 2/5 2023年にも法制化

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