市場再編は「社外取締役インフレ」をもたらすが、効果を引き出すのは容易ではない。形だけの企業もあれば、社長1人で社外8人と対峙する経営で伸びる企業もある。 「対話の力こそが企業競争力」となる時代へ。東証の改革はそのスタートラインだ。

 「これはもう分かっていたことだから……」──。

 7月9日、ゆうちょ銀行の経営陣は、東証からのプライムに適合しないとの通知を静かに受け止めた。市場再編に伴って現在の東証1部上場企業がプライム市場に移行する基準のうち、「流通株式比率35%以上」を満たせなかったのだ。

 親会社である日本郵政によるゆうちょ銀の保有比率は約89%。東証がプライム適合の判定を通知した7月初旬時点では流通株比率はわずか8.8%だった。基準のクリアは容易ではないが、市場再編の本質的な影響は、プライム当落だけではなかった。

<span class="fontBold">流通株比率をどう上げるか。難題に悩む池田憲人・ゆうちょ銀行社長(左)と増田寛也・日本郵政社長</span>(写真=上:日刊工業新聞/共同通信イメージズ、増田社長:共同通信)
流通株比率をどう上げるか。難題に悩む池田憲人・ゆうちょ銀行社長(左)と増田寛也・日本郵政社長(写真=上:日刊工業新聞/共同通信イメージズ、増田社長:共同通信)

 市場再編との両輪として今年6月に改定されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、プライム上場の支配株主のいない企業では独立社外取締役を取締役の3分の1以上、支配株主がいる場合は半数以上にすることを求めている。独立社外取締役とは、グループ企業や主要な取引先の役職員ではないなど、独立性のある社外取締役。支配株主とは、オーナーなど50%以上の議決権を持つ株主のことだ。

 市場再編に伴ってゆうちょ銀に突き付けられた課題も実はそこにあった。プライム移行への対策としてゆうちょ銀は今年8月末、7億5000万株もの自己株消却を発表した。これで流通株比率は8.8%から10.6%に上がることになった。

 それでも難題は終わらない。流通株比率を35%以上にするには、日本郵政が持ち分の一部を市場に放出することが必要で、同社は既に2025年度までに持ち株比率を50%以下に下げると発表している。とはいえ、それほど大量の株を売却すれば株価は大幅に下落する可能性が高い。そうなれば、最終的には国庫に入る資産の減少にもなりかねない。

続きを読む 2/5 既に社外取比率は高いが……

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