晴れて上場企業になりたい。その強い思いは、多くのスタートアップ企業も同様だ。ただここにきて、早期の上場を目的にする「上場ゴール」を避ける動きも出てきた。上場は目的でなく手段。資金調達環境の改善もあり、そんな考えが浸透している。

<span class="fontBold">C Channelの森川亮社長はプロ向け市場への上場を選んだ</span>
C Channelの森川亮社長はプロ向け市場への上場を選んだ

 「正直かなり悩んだが、結果的には良かった」。動画配信のC Channel(東京・目黒)を率いる森川亮社長は、2020年5月に実施した異例の「プロ向け市場」への上場をこう振り返る。

 LINEの経営トップだった森川氏がC Channelを創業したのは15年。手掛けたのは、メークやファッションなど主に女性をターゲットにした動画の作成・配信だ。ベンチャーキャピタル(VC)などから累計100億円超を調達して事業を拡大。20年5月時点でSNS(交流サイト)の公式アカウントのフォロワー数は国内外で延べ3830万人に達した。

 そんな森川氏が選んだ上場先は「TOKYO PRO Market」。機関投資家などに限定した市場で、マザーズのように一般投資家は買い付けできない。株式の流動性は極めて低く、巨額の資金調達を果たしたスタートアップの上場は珍しい。

マザーズ上場は断念

 当初目指していたのはマザーズ市場。だが上場準備を進めるうちに業績が大きな障害になった。20年3月期におけるC Channelの最終損益は17億円の赤字。「BtoC(消費者向けビジネス)かつサブスクリプション(定額課金)型ではないビジネスでは合理的な説明がつかない」という判断となり、マザーズ上場は断念せざるを得なかった。

 そんな折に森川氏の目に留まったのが、TOKYO PRO Marketだった。「まずは上場して成長投資へ振り向けたい」と上場を決断。投資回収を急ぐVCなどは反対したが何とか説得し、時価総額200億円規模で異例のプロ向け市場上場にこぎ着けた。

 上場から1年以上がたった今、メリットも実感している。「一番は信用力。上場したことで取引はしやすくなった」と森川氏。採用面でも有利に働いているという。「デメリットはPRO Marketの認知度が低く、金融機関の借入時に説明が必要な程度だ」と続ける。

 スタートアップ経営者の多くが目標に掲げるIPO(新規株式公開)。一般社団法人のベンチャーエンタープライズセンター(東京・千代田)が発行した「ベンチャー白書2020」では、出口戦略として「IPOを目指す」と回答したスタートアップは39.5%を占め、「M&A(合併・買収)を目指す」という回答は5.4%にとどまった。とりわけVCからの出資を受けたスタートアップに限ると、IPOを目指すという回答は59.2%に達する。

続きを読む 2/3 「なぜ上場」見つめ直した

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