この記事は日経ビジネス電子版に『東証市場再編、「スタンダードで何が悪い」 悩める当落線上の企業』(9月28日)として配信した記事などを再編集して雑誌『日経ビジネス』10月4日号に掲載するものです

流通株式時価総額などの基準をクリアしているかどうかは、上場企業へ通知済み。特にプライム市場当落線上の東証1部企業は生き残りをかけて必死だ。突き付けられているのはこの問いだ。その市場になぜこだわるのか──。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 新市場区分「プライム市場」選択に関する取締役会決議のお知らせ──。足元では、東証1部上場企業によるこうした発表が相次いでいる。日本取引所グループ(JPX)の適時開示情報閲覧サービスで「新市場区分」のキーワードを検索すると、9月21日までの1カ月だけで445社ある。しかし、これらは「結果」にすぎない。水面下では今、何が起きているのか。

 トヨタ自動車のトヨタ紡織株売却、野村総合研究所による野村ホールディングス(HD)からの自己株取得、ZOZOが創業者・前沢友作氏の保有株を取得……。「プライム当選確実」に向けて資本施策を見直す大手企業の動きも目立っている。

<span class="fontBold">保有株式を処分したZOZO創業者の前沢友作氏</span>(写真=共同通信)
保有株式を処分したZOZO創業者の前沢友作氏(写真=共同通信)
<span class="fontBold">トヨタ自動車は子会社のトヨタ紡織株を一部売却した</span>(写真=共同通信)
トヨタ自動車は子会社のトヨタ紡織株を一部売却した(写真=共同通信)

 しかし、胸を張って「プライム上場」を宣言できる企業ばかりではない。基準に満たない企業、当落線上にある企業の動向こそ、東証市場再編問題の根幹だ。

 東京証券取引所グループと大阪証券取引所が経営統合し、JPXが誕生したのが2013年1月。振り返れば、ここから東証1部の地位が揺らぎ始めた。1部への直接上場には時価総額250億円以上という基準があるが、2部やマザーズからの移行は「時価総額40億円以上」と比較的緩かった。いわば“裏口入学”で東証1部を目指す企業も増え、上場企業全体の約6割を占めるまでに膨れ上がった。「規模が小さくて投資家から見向きもされないゾンビ企業も多い」と指摘され、同じ東証1部でも時価総額が20億円規模の企業もいれば、10兆円超の企業もある。

 東証の国内上場企業の時価総額(20年12月末時点)は6.7兆ドル(約740兆円)と、米国のニューヨーク証券取引所の上場企業の時価総額の4分の1程度。中国・上海証券取引所にも逆転されている。市場再編によって誕生するプライムは海外からの投資を呼び込む狙いがあるが、それはふるい落とされる企業が出てくることも意味する。

 「うちにふさわしいのはスタンダード。やみくもにプライムを目指さない」。経営陣で議論した末、一定の方向を見いだした東証1部の居酒屋チェーン大手のある役員はこう打ち明ける。正式発表はまだ先になる。

 コロナ禍により、時短営業や酒類提供の停止など、店舗が通常営業できない状態が長引いている。「基準未達でも経過措置で当面はプライム上場を維持できるが、最終的に陥落したら意味がない」とこの役員は語る。プライム上場となれば独立社外取締役の選任や英文開示促進などガバナンス(企業統治)を整える業務は増える。「上場は目標だが、それ自体が会社の目的ではない」と思い至った。

 何のための上場か。教科書通りに言えば、株式を多くの人に保有してもらい、成長分野への資金を調達するためであり、株式の公開で信用力や知名度を上げるためだ。東証1部相当の事業規模があるのにもかかわらず、日本マクドナルドホールディングスのように、新興市場のジャスダックへの上場を選ぶ企業もある。

<span class="fontBold">プライム基準に適合する日本マクドナルドHDはジャスダック上場企業だ</span>(写真=共同通信)
プライム基準に適合する日本マクドナルドHDはジャスダック上場企業だ(写真=共同通信)
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