チェスや将棋では人間はAIにかなわない。あらゆるゲームでAIに負ける世界が到来する。ゲーム産業は仮想世界を現実と融合させる「メタバース」を次の成長領域とみる。「遊びをせんとや生まれけむ」。人間の本質とどう向き合うかが問われている。
今、ネット麻雀ファンの間でひときわ注目を集めるユーザーがいる。
名前は「Suphx(スーパー・フェニックス)」。2019年3月にオンライン麻雀(マージャン)「天鳳」に参戦して、6月に最高位である10段に上り詰めた。プロ雀士も含まれる33万人のユーザーの中で、当時10段を認定されていたのは12人しかいなかった。
その実力を証明した3カ月後、スーパー・フェニックスはネット麻雀から姿を消した。そして20年12月、再び天鳳に参戦したのだ。
正体は米マイクロソフト(MS)が中国・北京に置くリサーチ部門が中心となって開発したAI(人工知能)だ。1度は引退したスーパー・フェニックスを復帰させた理由について、MSは「アルゴリズムを更新するためだ」と明かす。
チェス、将棋、囲碁では勝てない
米IBMが開発したスーパーコンピューター「ディープブルー」が、旧ソ連が生んだ世界最強のチェスプレーヤー、ガルリ・カスパロフ氏に6番勝負で勝ち越したのは1997年。相手から取った駒を使えることからさらにルールが複雑とされる将棋では、2015年に情報処理学会が「コンピューターがトッププロ棋士に追いついた」と宣言。17年に佐藤天彦名人をAI「Ponanza」が打ち負かしたことでそれを証明した。
19×19という広い盤面を持つ囲碁の攻略は、力任せの演算を得意とするコンピューターといえども苦手とされてきた。ところが16年、米グーグル子会社のAI「アルファ碁」が韓国のトップ棋士を撃破。17年に中国のトップ棋士にも連勝したことで、AIが人間を抜き去ったことがはっきりした。
「たかが遊び」に、世界のビッグテックが本気で取り組むのはなぜか。「ルールが決まっているゲームという世界が、コンピューターの技術を磨く環境としてうってつけだからだ」と、AIに詳しい東京大学の松原仁教授は解説する。
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