この記事は日経ビジネス電子版に『「アヘン批判」で海外進出加速、中国ゲーム業界のジレンマ』(9月16日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月27日号に掲載するものです。
中国国営メディアはゲームを「電子薬物」と批判し、業界への締め付けを強める。世界を席巻する力を付けた中国のゲーム産業だが、国内頼みの成長は曲がり角に。未成年がゲームとの接点を失うと、将来を担うソフト人材が失われかねない。

「今まで負けたときの定番の言い訳は、未熟な子供がチームにいたからというものだった。9月からは子供がいないから勝てないというのが言い訳になった」。5人で相手チームと対戦する中国の騰訊控股(テンセント)の人気ゲーム「王者栄耀」のユーザーである広州市在住の20代男性はこう苦笑する。
「精神的アヘンが数千億元の市場に成長してしまった」。8月3日、国営メディアの経済参考報はゲーム業界をやり玉に挙げる記事を掲載した。中国はかつてアヘン戦争で辛酸をなめるなど、麻薬へのアレルギーが極めて強い。
記事は「ゲームは電子薬物であり、未成年に悪影響を与えている」などと強烈に批判し、王者栄耀を名指しした。あまりの反響に驚いたのか、ネット版の記事は公開まもなく「アヘン」表現を削除した修正版に差し替えられた。
国営メディアによる特定産業の批判記事は、中国では規制強化の前触れを意味することが多い。コンテンツ規制当局である国家新聞出版署は同30日、「金、土、日、祝日の午後8~9時までの1時間しか未成年にオンラインゲームサービスを提供してはならない」という内容の規制を発表し、ゲーム運営企業にユーザーの実名管理を徹底するよう指示した。
規制発効は9月1日。猶予は2日間しかなかったが、テンセントや中国ゲーム大手の網易(ネットイース)などは即座に「全面的に従う」と表明した。4日土曜日の夜には、解禁時間を待ちかねた未成年者が一斉にアクセスしたことで王者栄耀のサーバーがダウンし、ニュース速報が流れる騒ぎも起きた。
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