実況が生むネットワーク効果

 億ゲーのほとんどは、無料でダウンロードして遊び始められる。「フリー・トゥ・プレー」と呼ばれる仕組みだ。アイテムの購入などで課金するのは海外も国内も同じだが「日本はコアなファンに厚く課金して収益を上げるが、海外は広く薄くが一般的」(安田氏)という。海外でユーザー数を増やして稼がずとも、国内である程度のビジネスができていたというのが実情だろう。そして気付くと、海外のゲームが加速度的に普及していたわけだ。

 スマホ普及はゲームのマーケティング手法も一変させた。今の消費者はゲーム実況配信を観て面白そうだと思えば、即座に同じ端末でアプリをダウンロードする。ネットを通じて同じゲームを同時にプレーするようになり、利用者が増えるほど価値が高まるネットワーク効果をいかに発生させられるかがヒット作りのポイントになった。

 米アマゾン・ドット・コムは2014年時点で1000億円を投じてゲーム実況サイトの「Twitch(ツイッチ)」 を傘下に収めている。今やゲーム実況全体の総視聴時間は世界で1日1億時間を超えるとされる。従来のゲーム機向けソフトはストーリーを練り込む半面、「ネタばれ」を嫌う傾向があり、実況の許可には及び腰だった面がある。

 既存のビジネスモデルが強すぎたあまり、世界の潮流に乗り遅れる。ユーザー数を急拡大させられない姿は、かつての携帯電話産業を彷彿させる。

 日本の携帯電話は1990年代、世界の先頭を走っていた。NTTドコモが端末仕様を決め、富士通やNECといったメーカーがその方針に従うことで発展した。だが「iモード」などの独自仕様にこだわった結果「ガラパゴス携帯(ガラケー)」と呼ばれるようになり、アップルやグーグルのスマホに駆逐されていった。今はゲーム専用機向けビジネスが成立しても、拘泥し過ぎればガラケー同様「イノベーションのジレンマ」に陥る可能性がある。

カプコンはあえてPC向けに注力

 過去の成功にすがらず、大きく戦略転換を進めるメーカーもある。

 コナミデジタルエンタテインメントは9月、サッカーゲームの名称を刷新。95年に発売した人気シリーズ「ウイニングイレブン」の名前を捨て、世界共通の「eFootball(イーフットボール)」として売り出す。フリー・トゥ・プレーに統一し、スマホや専用機など「デバイスの垣根を越えて対戦できるようにし、ゲームに広がりを持たせたい」と木村征太郎プロデューサーは語る。

<span class="fontBold">カプコンの辻本春弘社長COO(最高執行責任者)はスマホユーザーのPCゲームへの移行を予測する</span>(写真=的野 弘路)
カプコンの辻本春弘社長COO(最高執行責任者)はスマホユーザーのPCゲームへの移行を予測する(写真=的野 弘路)

 カプコンの辻本春弘社長COO(最高執行責任者)は「家庭用ゲーム機も大事だが、今後はパソコン向けに特に注力したい」と話す。見据えるのはゲーム人口が急増するアジア諸国だ。

 日本など先進国はスマホの登場前にパソコンが一定程度普及していたが、新興国はそうではない。「まずは個人がスマホを持ち、ゲームと出合う。そのなかでより高度なゲームを体験したい層が、処理能力が高いパソコンへと移行する」と辻本社長。手軽な無料ゲームよりむしろ、ハイスペックなゲームを手掛けた方が勝機があると考える。

<span class="fontBold">カプコンは今年5月、最新作「バイオハザード ヴィレッジ」を発売</span>(写真=カプコン提供)
カプコンは今年5月、最新作「バイオハザード ヴィレッジ」を発売(写真=カプコン提供)

 「PS以外のプラットフォームのユーザーにも素晴らしい(自社)IPを届けていく」。SIEのジム・ライアン社長兼CEOは今年5月、投資家などに向けてメッセージを発した。SIEはこれまで、ハードの競争力を維持するため、自社ソフトを他のプラットフォームに提供することに積極的ではなかった。マルチデバイスへの対応の流れを受けて、方針転換を始めた格好だ。

 巨大化する海外勢と、変革を余儀なくされる国内勢。中国では別のプレーヤーが影響力を強めている。