この記事は日経ビジネス電子版に『野田クリスタルが語る「まさか俺のゲームを任天堂が認めるとは」』(9月15日)『世界3億5000万人が集うゲーム、「フォートナイト」の磁力』(9月17日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月27日号に掲載するものです。

ゲームは娯楽の域を超え、人々をつなぐプラットフォームと化しつつある。1億人を超えるユーザーを抱えるゲームも登場し、国境を越えて新たなビジネスを生む。そこに日本勢の存在感は薄い。強すぎた過去が「イノベーションのジレンマ」をもたらしている。

(写真=© 2021, Epic Games, Inc.)
(写真=© 2021, Epic Games, Inc.)
<span class="fontBold">人気女性歌手のアリアナ・グランデさんがゲーム内の仮想空間でイベントを開催。日本でもネットで「トレンドワード」に入るなど話題を呼んだ</span>(写真=Mike Coppola/Getty Images)
人気女性歌手のアリアナ・グランデさんがゲーム内の仮想空間でイベントを開催。日本でもネットで「トレンドワード」に入るなど話題を呼んだ(写真=Mike Coppola/Getty Images)

 ピンク色に彩られた独創的な空間に、まばゆい光を放ちながらスターが現れた。8月7~9日、米人気歌手のアリアナ・グランデさんが5回にわたってライブイベントを開催。新型コロナ禍で娯楽に飢えていた、全世界のファンが狂喜した。ただしこれは、現実世界の物語ではない。歌姫が降臨したのは仮想世界のゲームの中だ。

 「フォートナイト」。米エピックゲームズが開発・配信するバトルゲームで、世界で最も多くのファンを抱えるゲームの一つ。2017年の公開からわずか4年ながらユーザー数は3億5000万人に膨張した。国別人口で世界3位の米国(約3億3000万人)を超える規模だ。

 特定メーカーのゲーム機に依存せず、パソコンやスマートフォンなどインターネットにつながる多くの端末で原則無料で楽しめる。国境も時差も関係ない。最大100人のプレーヤーが最後まで生き残るために、日夜バトルロイヤルを繰り広げる。

 グラミー賞を受賞した人気者がなぜ、こんな殺伐とした場所でライブイベントを開催したのか。秘密はフォートナイトの「パーティーロイヤル」モードにある。バトルを繰り広げる空間とは異なり、音楽ライブなどを楽しむために設定されたものだ。ほかにユーザーが独自の仮想世界を構築して集客できる「クリエイティブ」モードなどもある。

(写真=© 2021, Epic Games, Inc.)
(写真=© 2021, Epic Games, Inc.)

 イベントへの参加は無料だが、限定アイテムなどの販売が可能で経済効果は大きい。20年4月には米国の人気ラッパー、トラヴィス・スコットさんがイベントを開催。世界各地から1230万人が同時に接続し、アイテムの売り上げなどは2000万ドル(約22億円)に上ったとされる。同年8月には人気シンガー・ソングライターの米津玄師さんもフォートナイト上で楽曲を披露した。

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