再エネ発電は北海道や東北に多い。大消費地への送電が課題だ。国土が南北に長い島国で、周波数も東西で異なる難点をどう補うか。要素技術はそろってきたがコストの問題もある。最適解はどこにあるか。

 「電力系統の増強に必要な投資額は最大4.8兆円」。電力広域的運営推進機関(広域機関)は今年、全国的な送電網の整備についての試算値を示した。

 日本で再生可能エネルギーの利用を拡大するには、送電網に対する巨額投資が必要になる。このコストは賦課金などで将来の電気代に上乗せされる可能性があり、いかに国民負担を抑えながら遂行できるかが課題だ。

 広域機関は、電力改革の目玉として6年前にできた。全ての電気事業者に加入義務があり、電気の安定供給について指示している。さらに2020年に成立したエネルギー供給強靭化法に基づき、国と連携した長期計画「マスタープラン」も22年度中に決める。

53%は北海道・東北発

 国の第6次エネルギー基本計画(原案)では、30年の電源構成に占める再エネ比率を36~38%とし、従来計画のおおむね1.6倍になった。これを支える送電網もさらなる増強が必要になる。

 この検討委員会のメンバーでもある東京大学の松村敏弘教授は「本当に膨大な額の投資が適切なのか、よく考えないといけない」と険しい表情を浮かべる。送電網は数十年にわたって使うインフラで、日本の産業競争力を保つために重要だ。ただ、日本の地理的な特殊性もあって、どう整備するかがコストを大きく左右する。

 日本列島は南北に長い。そして再エネで発電しやすい地域が偏っている。今、送電網整備で有力案となっているのは「電源偏在シナリオ」という。洋上風力を45ギガワット(4500万kW)導入した場合、そのうち53%は北海道・東北に集中すると想定している。北海道と東北6県の電力需要は全国の1割しかないので、3割を占める大消費地、関東に送電する。洋上風力は九州にも偏在する見通しで、こちらは中四国との連系が欠かせない。

全国で巨額投資が必要に
●電力広域的運営推進機関による送電網整備コスト試算
(電源偏在シナリオ=45GW)
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 しかし、整備コストをおおむね6割減らせる「電源立地変化シナリオ」もある。洋上風力の北海道・東北への依存度を33%にとどめ、東京近郊に20%相当の917万kW分を新設するという想定だ。この場合、送電網の投資額は1.5兆~1.7兆円に抑えられるが、マスタープランへの中間整理では「ケーススタディー」と位置づけられ、参考にされる程度にとどまっている。

 松村教授は「日照や風況の良い場所に立地したら電源は偏ってしまう。送電コストを考えて、需要地の近くにもっと誘致すべきではないか」と語る。ただ、検討会は駆け足で議論せざるを得なかった。日本が目標とする30年の温暖化ガス46%削減まで、あと9年しかない。ところが送電網の整備には何年もかかる。鉄塔のような大規模設備については周辺住民の理解が、海底ケーブルは漁業者との話し合いが必要だ。そしてやっと長距離の敷設工事が始まるので、案は今のうちに急いで土台を固めないとならなかった。

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