この記事は日経ビジネス電子版に『スーパーシティの光と影』として連載した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』9月13日号に掲載するものです。

「全くの想定外だ」。国のスーパーシティ構想が漂流し始めた。抜本的な規制緩和の提案を求める国と、地域課題の解決を重視する自治体。両者のすれ違いの構図が、未来都市の実現を遠ざけつつある。

<span class="fontBold">政府はスーパーシティの公募を2020年末に開始。今春には選定を済ませるはずだった</span>(写真=共同通信)
政府はスーパーシティの公募を2020年末に開始。今春には選定を済ませるはずだった(写真=共同通信)

 「全くの想定外。具体的な方向性が示されないとあっては、どうしようもない」(某県幹部)、「計画が大幅に変わってしまうかもしれない」(応募した市の担当者)──。

 国の「スーパーシティ」構想に応募していた31の自治体グループに衝撃が走った。スーパーシティの選定に関する国の専門調査会が8月6日、全ての自治体に対して再提案を求めることを決めたのだ。

北は北海道から南は沖縄まで
●スーパーシティに立候補した31グループ
<span class="fontSizeL">北は北海道から南は沖縄まで</span><br><span class="fontSizeS">●スーパーシティに立候補した31グループ</span>
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「規制緩和の提案乏しい」

 「規制改革の規模が小さかったり、本当に住民合意を必要とする改革ではなかったりといった問題を抱えていた」。提案について各自治体からヒアリングした国家戦略特区ワーキンググループの座長を務める八田達夫・アジア成長研究所理事長は、このように述べて再検討を促した。ワーキンググループがまとめた講評にも「大胆な規制緩和の提案が乏しかった」「補助金申請と混同している印象のものが少なくなかった」といった辛口の評価が並ぶ。

 事前にヒアリングを受けていた自治体にとっては寝耳に水だった。スーパーシティに応募した自治体を抱える県の幹部は憤りを隠さない。「6月の時点で、夏といわれていた決定がずれ込むことは折り込み済みだった。ただ、それはコロナ対応や総選挙との兼ね合いだと思っていた。ヒアリングの後、3カ月近くもたなざらしにして、揚げ句の果てに全員出し直しとは。本当にばかにした話だ」

 自治体に与えられた再考の期間は2カ月ほど。内容を見直して10月15日までに再提案するか、スーパーシティ指定を諦めるかという判断を迫られている。

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