この記事は日経ビジネス電子版に『それでもシリコンバレーは世界の中心 100億円調達した北欧企業』(8月26日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』8月30日号に掲載するものです。

シリコンバレーはこのまま沈んでしまうのか。答えはそう単純ではない。リスクマネーと最先端エンジニアの「ハブ」として、求心力はむしろ広がっている。一極集中から広域・分散へ。生態系は静かに進化を遂げつつある。

<span class="fontBold">グーグルが建設中の本社エリアの新オフィス。周辺住民が利用できるオープンスペースも用意する予定。カリフォルニア州サンフランシスコ(下)では規制が緩和され、オフィス街や観光地に人が戻り始めた</span>
グーグルが建設中の本社エリアの新オフィス。周辺住民が利用できるオープンスペースも用意する予定。カリフォルニア州サンフランシスコ(下)では規制が緩和され、オフィス街や観光地に人が戻り始めた

 「コロナ禍でシリコンバレーに起こったのは衰退ではない。広域化だ」──。

 シリコンバレーでビジネスや投資に取り組む多くの関係者は、コロナ禍以降の変化についてこう表現する。

 PART2で見た米リンクトインによるシリコンバレーから他の都市への移転データはそれを裏付ける。テキサス州やコロラド州といった遠方だけではなく、カリフォルニア州の州都サクラメントやネバダ州リノといった近隣にも人材が移っているのだ。ワインの有名産地ナパバレーや全米屈指のリゾート地であるタホ湖も近いエリアだ。

 サクラメントはシリコンバレー北側のサンフランシスコ市内から車で北東に約1時間、リノはさらに北東に約2時間のところにある。月に数回であれば、シリコンバレーのオフィスに来ることは難しくない距離だ。

グーグル親会社、学長が会長に

 こうした人材や企業の流動化は、今後も続くだろう。それでも簡単には揺るぎそうにないのが、シリコンバレーのエコシステムだ。

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 スタートアップを中心に、アカデミア、テクノロジー大手、そしてベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家などの資金の出し手が、カネや人、ノウハウを提供し支援している。スタートアップの上場などによる利益がその見返りだ。弁護士などの専門家もスタートアップや起業を支援する。同じ地域に一極集中するこれらの機能や人材が有機的につながり、次々に成長企業やイノベーションを生み出してきた。

 人材の流動性も高い。最も特徴的なのは、大学などアカデミアと企業の垣根が極めて低いことだ。例えば米グーグルの親会社である米アルファベットは、2018年に退任したエリック・シュミット前会長の後任として、前スタンフォード大学学長のジョン・ヘネシー氏を迎えた。スタンフォード大はグーグルの共同創業者、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンの両氏の出身校で、シリコンバレーのエコシステムを人材面から支えている。

 この世界屈指のエコシステムには、コロナ禍においても膨張し続けるマネーが流れ込んできている。世界のVC投資のおよそ半分が米国、そしてその4割がシリコンバレーという状況は変わっていない。アフターコロナのデジタル化を支援する銘柄への投資で、21年第1四半期は大きく伸びている。

 この強固なエコシステムを最大限に活用しようと、スタートアップや起業家が海外からも次々に集まってくる。 その一社が、フィンランドのヘルスケアスタートアップのオーラヘルスだ。同社は13年にフィンランドのノキアのエンジニアらが設立し、指輪型のヘルスケアデバイスを開発していた。従来はフィンランドや英国のVCからの投資を受けていたが、19年にシリコンバレーにオフィスを構え米国での活動を本格化させた。

 そして21年5月には100億円以上の投資ラウンドを成功させたのだ。主要投資家の7者のうち1者がシリコンバレー、2者がカリフォルニア州ロサンゼルスのVCだ。シリコンバレーに本拠を構えるクラウドサービス大手、米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEO(最高経営責任者)も参加している。

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