この記事は日経ビジネス電子版に『テキサスに「イーロン・マスクの街」? テスラ新工場に行ってみた』(8月23日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』8月30日号に掲載するものです。

米国の産業構造とその中心地が大きく変わろうとしている。「ネクスト・シリコンバレー」とも称されるのは、テキサスやコロラド、アリゾナなど南西部の街。実際に現地を訪れて見えてきた、世界最大の経済大国の新たなダイナミズムとは。

 米テキサス州の州都オースティン。夜には繁華街のライブハウスからカントリーやロックが鳴り響き、週末になると人々は公園や湖でトレッキングなどを楽しむ。この南部の都市が今、「米国の未来を支えるネクスト・シリコンバレーになる」と注目を集めている。

 渦中にいるのが、2020年12月にカリフォルニア州からテキサス州への移住を公表した米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)だ。米ウーバーテクノロジーズの運転手として働く白人男性は記者に得意げに言った。「マスク氏の自宅はオースティン西部にある。一般的な住宅の10倍はある大豪邸さ」。ところが一転、顔を曇らせて続けた。「でも彼のせいで住宅価格は急上昇。カリフォルニアやニューヨークから金持ちがたくさん移住してきているから。投資家も多いね」

住宅価格は1年で43%上昇

 オースティン・リアルター協会の調査によると、オースティン周辺の21年6月の平均住宅価格は前年同月比43%増の48万2364ドルで、過去最高を記録した。米オラクルが本社を同市に移転し、米グーグルも拠点を拡大するなどテック大手の進出も進む。急激な発展ぶりに地元住民も困惑気味だ。

●2020年10~12月期から21年1~3月期の実質米国内総生産(GDP)の年率の成長率の変化
<span class="fontSizeL">●2020年10~12月期から21年1~3月期の実質米国内総生産(GDP)の年率の成長率の変化</span>
出所:米国勢調査局
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●人口の多い都市別の人口成長率ランキング
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出所:米国勢調査局
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 コロナ禍に端を発した在宅勤務の普及により、米国で「民族大移動」が起きている。その目的地として地方都市は大人気。米国勢調査による10年から20年までの都市別人口成長ランキングで、アリゾナ州フェニックスが1位、ヒューストンとダラス、サンアントニオのテキサス州3都市が2~4位を占めた。20年10~12月期から21年1~3月期にかけての国内総生産(GDP)成長率では、コロラド州やアリゾナ州などの山岳部が急速な伸びを示している。

 急成長の理由を人の流入だけで片付けるのは早計だ。今、新産業を育む「ゆりかご」が地方に続々誕生している。

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