現在の家族のありようは明治時代の制度が土台となっている。これがLGBTQ+だけでなく、多様な価値観を持つ人も苦しめている。男女の二者択一から「誰もがマイノリティー」へ。そんな切り替えが視界を開く。

<span class="fontBold">世界各地で権利や保障を求めたパレードが相次いでいる(写真はハンガリーでのパレード)</span>(写真=AFP/アフロ)
世界各地で権利や保障を求めたパレードが相次いでいる(写真はハンガリーでのパレード)(写真=AFP/アフロ)

 8月8日に閉幕した東京五輪。男子シンクロ高飛び込みで金メダルに輝いたトーマス・デーリー選手は3大会連続でメダルを獲得するなど、英国ではスターアスリートの一人だ。2013年にゲイであることをカミングアウトし、パートナーとの間に代理母出産で授かった子どもを持つ。

 多様性と調和がうたわれたスポーツの祭典。女子の重量挙げに、五輪で初めてトランスジェンダーの選手が出場したことも相まって、多様な性と、それを巡る様々な議論に目を向けた人も少なくないのではないだろうか。

 セクシュアリティーはこれまで、国家による家族の定義と密接に関わっていた。夫婦が家族の最小単位となり、性別に分かれた役割を担い、福祉や税といった制度に結びつく。こうした家族制度こそが国家のベースとなっていた。今、その概念が揺らぎつつある。

男尊女卑は修正されたが

 歴史をひもとくと、現在の家族制度は江戸時代まで存在した武家をルーツにしている。家父長が絶対的な権限を持ち、長男が家督を相続する圧倒的に男性優位の家族形態だ。

 明治時代に入ると武家の家制度に倣った民法を制定。江戸時代は男女の分け隔てなく、共同体として子育てや家事をする層があったものの、人口の1割にも満たない武家の価値観を残り9割の日本人にも適用した。こうして男性優位の家制度が敷かれていった。

 戦後、民法が改正され、家の制度が廃止された。その際、男女による婚姻によって家族が構成されるということが決まった。この「標準世帯」が現在の日本の制度の前提となった。

 それが現代のLGBTQ+を苦しめる結果になっているのは、ここまで見てきた通り。この一方的な決めつけに縛られて苦しむのは、「マジョリティー」とされる人も同じなのではないか──。そう感じたのは、取材班が一人の会社員の女性(31)に会ったときだった。

 その女性は関東近郊にある実の家族と折り合いが悪く、親友の男性とルームシェアを続けている。都内の大手印刷会社で正社員として働き、自分が生活できるだけの給料を稼ぐ。

 「大学に進学してから実家に帰っていない。病気など緊急時に親へ連絡が入るのかと思うと憂鬱で、新しい家族関係を模索し続けている」と言う。同居する男性とは性的な関係はないため、婚姻関係を結ぶことも子どもを持つこともない。それでも今後も一緒に暮らしていく。

 「結婚はしないのか」「子どもはいつつくるのか」

 男女を問わず、こう聞かれたことがある人は多いはずだ。この言葉を無意識に言う人は多いし、発する人には何の悪意もないかもしれない。ただ、鎖に縛り付けられるような面倒臭さと、重たさを感じる人もいる。

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