この記事は日経ビジネス電子版に『とがった人材はどこに? 住友商事「デザイン選考」の試行錯誤』(8月5日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』8月9日号に掲載するものです。
多様な人材を採用し始めた企業。欧米で進む波が日本でも強まる。しかし、日本の労働市場に残されたミスマッチが今後の深刻なハードルとなるだろう。

IT(情報技術)、コンサルティングから食品まで──。産業を問わず、幅広い日本企業が高等専門学校や美術大学などの人材に注目していることは、企業の人材戦略が大きな転換点に来ていることの表れだ。
企業は今、新卒採用において人材に「スキル」を求め始めている。ここで言うスキルは、高専生や美大生が数年間に習得する実践・思考方法のことを指している。似た学部が並んでいる総合大学の学生に比べ、高専や美大を出ている人材が明確なスキルを持っていることはここまで見た通りだ。
世界ではこうした人材戦略の変化が早くから進んできた。
日本に及ぶ多様性の波
例えば、米IBMのバージニア・ロメッティ元CEO(最高経営責任者)がデザイナーを新戦力として強化すると宣言したのは2012年。パソコンなどモノの開発でもデザイナーは活躍していたが、ITを駆使したサービスへと事業の重点が移ると一層、その役割が広がると考えた。
同社には世界で現在、デザイナーが約1600人いる。日本IBMで企業のデジタルサービス創出などを支援する部署の統括役、柴田英喜デザインプリンシパルは「グローバルでは、学んできたことをベースに多様な人材をいかにそろえるかを企業が競っている。その波は当然、日本でも強まる」と話す。
ただ、ここに大きな課題がある。どんな人材が欲しいのか、多くの日本企業がまだ明確にできていないことだ。それによって、大学もどんな学生を育てるべきなのかがよく見えない。
結果として「学ぶことと働くことが深く分断されている」。教育と雇用の関係に詳しい日本総合研究所(東京・品川)の安井洋輔主任研究員はこう話す。
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