この記事は日経ビジネス電子版に『高卒採用を再開した大和ハウス 会社支える“エリート”に』(8月3日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』8月9日号に掲載するものです。
高等専門学校生や美術大学生ら学生時代にスキルを培ってきた人材の争奪戦は今後激しくなる。同時に今、再び着目されているのが高卒生。いったん中止していた採用を再開する動きが相次ぐ。やる気のある高卒者を採用し、積極的に教育に投資すれば“エリート”になると期待する。

「2年後に入社してくる大卒者には絶対に負けるな」
住宅大手、大和ハウス工業の芳井敬一社長は毎年春になると、初々しい若者にハッパを掛ける。その相手は、高校を卒業したばかりの新人たちだ。
同社は9年ぶりに、2018年4月入社から高卒採用を再開した。首都圏の工業高校の生徒を集め、会社全体で毎年10人前後が入っている。
採用された高卒者は、入社と同時に建築系の専門学校に入学し、2年間は勉強に専念する。学費は会社負担で、給与も支払われる。長期休暇で授業がない期間は現場で実務を学ぶ。入社3年目からは、その年度に入社してきた大卒・院卒者などと合流して研修を受け、やがて施工管理職として働き始めるという流れだ。この制度では入社後の2年間、現場の戦力にはならない。
東京本社人事部長の菊岡大輔氏は高卒採用の狙いについて「仕事に必要な知識を身に付けていると確証をもって現場に送り込める」と話す。2年間みっちりと教育することで、優秀な人材を育てようというわけだ。
高卒の採用再開後の1期生で、入社4年目の東京本店東京工事部の平野諒さんは「給与をもらいながら学校へ行けるなんてとてもありがたかった。専門学校では、他の生徒に負けてはいけないという意識で勉強した」と話す。
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