欧州はEVシフトを産業振興と明確に位置付け、あえて厳しい規制を導入している。CO2対策の市場を創造し、EVを中心とした経済圏で覇権を握るシナリオだ。日本はEV普及後をにらみ、自動車にとどまらない事業モデル構築を急ぐべきだ。

 工業社会の主役を100年以上張ってきた自動車用エンジンにとどめを刺した瞬間として、後世に残るであろう記者会見となった。7月14日、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長が、自動車業界を揺るがす規制を発表した。

 2035年に発売できる新車は「排出ガスゼロ車」のみとするというのがその内容だ。文面を解釈すれば、対象は電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のみになり、トヨタ自動車など日本勢が得意なハイブリッド車(HV)に加え、プラグインハイブリッド車(PHV)の販売も禁じることになる。自動車メーカー関係者は「予想していたシナリオの最も厳しいものとなった」と話す。

 同時に、30年の二酸化炭素(CO2)排出規制も見直した。従来は走行1km当たりのCO2排出量を21年比で37.5%削減する案だったが、削減幅を55%に引き上げた。CO2排出量が規制値を超えるHVは、販売が難しくなる。

 新規制案は加盟国や欧州議会の承認を受けなければならないが、フォンデアライエン委員長は「交通部門のCO2排出量は減るどころか増えている。これを逆転させなければならない」と語り、厳格な規制で譲らない構えを見せた。

(写真=Bloomberg/Getty Images)
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表で反発、裏では推進

 欧州の自動車業界は反発している。欧州自動車工業会(ACEA)は、「35年の規制は事実上のエンジン禁止になる。特定の技術に焦点を当てたり禁止したりするのではなく、イノベーションに焦点を当ててほしい」と訴えた。

 だが、欧州メーカーは「面従腹背」ならぬ、「面背腹従」の様相だ。表面的には反発しながらも、経営戦略では既に35年のエンジン禁止を織り込んでいる。

 30年の欧州新車販売のうち、独フォルクスワーゲンは7割、仏ルノーは9割をEVにする計画であるほか、いくつかのブランドがEV専業化を宣言している。

 利益が上げづらく経営を圧迫しているEVに、なぜこれほど力を入れるのか。その答えを示すような印象的な発言があった。19年3月、筆者はVWのディース社長に「現状ではライバルのトヨタ自動車より利益率が低い。EVの販売を増やしどのように利益率を高めていくか」と質問した。答えはこうだった。

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