この記事は日経ビジネス電子版に『五輪後にヤマ場迎える、選手村用地の「激安」売却訴訟』(6月22日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』7月19日号に掲載するものです。

異例ずくめの東京五輪・パラリンピックは開催後にも課題が多い。選手村は訴訟を抱え、国立競技場は年24億円の維持管理費がのしかかる。グランドデザインに欠ける五輪施設。民間活用で整備の失策を挽回できるか。

東京都中央区晴海5丁目に立つ選手村。都は2016年12月に不動産会社など11社と129億6000万円で敷地の譲渡契約を結んだ(写真=菅原 由依子)
(写真=菅原 由依子)

 東京五輪が終了してほどなく、深刻な問題がヤマ場を迎える施設がある。東京五輪・パラリンピックの開催期間中に各国・地域の選手団や関係者が生活する東京・晴海の「選手村」だ。五輪後に街区整備されるこの用地が「激安」で官から民に売却されたとして、都民が東京都を訴えている。訴訟は8月31日に東京地裁で結審する。

(写真=菅原 由依子)

 選手村用地は中央区晴海5丁目に位置しており、敷地面積は約13.4ヘクタールに及ぶ。五輪後には宿泊施設を住居棟に転用し、50階建ての超高層住宅棟や商業棟などを建設する大規模な都市開発が行われる。選手村用地の地権者だった都は2016年12月、11社の「特定建築者」(三井不動産レジデンシャル、エヌ・ティ・ティ都市開発、新日鉄興和不動産=現・日鉄興和不動産、住友商事、住友不動産、大和ハウス工業、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産、三菱地所レジデンス)と129億6000万円で譲渡契約を締結した。

適正価格の10分の1で譲渡?

 この譲渡価格が「不当に安価である」として17年8月、都民33人が小池百合子都知事らを相手取って東京地方裁判所に提訴した。原告側は、周辺の地価などから選手村用地の適正価格を1339億626万円と試算。この金額と譲渡価格の差額などを都や特定建築者に対して請求している。

 選手村用地の評価額を試算したのは都が土地価格調査を依頼した日本不動産研究所だ。同社は16年2月に各街区を一体として試算した土地価格が1m2当たり9万6800円であるとの調査結果を都に提出している。

 原告の一人である桝本不動産鑑定事務所代表で不動産鑑定士の桝本行男氏は、「都が発注した価格調査は不動産鑑定評価基準にのっとっておらず、近隣の公示地価や基準地価をまったく反映していない」と指摘する。

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