この記事は日経ビジネス電子版に『宣伝効果どころか「悪目立ち」も コロナ五輪に困惑する協賛企業』(7月9日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』7月19日号に掲載するものです。

都などとともに東京五輪・パラリンピックを支えるのは協賛金を出す企業だ。平時なら宣伝効果が期待できたが、コロナ禍で「利権集団扱い」に一変。前例のない大会は、国だけでなく企業にとっても大きな「賭け」だ。

(写真=共同通信)

 ほぼ無観客開催となった東京五輪。それでも羽田空港や成田空港には海外の選手団が続々と入国している。選手らは空港到着から、合宿地や競技場への移動などで行動範囲を限定し、外部と接触を絶つ「バブル方式」で行動する。ホストタウンとなる地方自治体などの関係者は感染症対策に奔走する。そんな前例なき五輪を支える集団に、大会オフィシャルパートナーであるJTBの社員が最大1000人も参加していることは、あまり知られていない。

 数十カ所の市町村で、ホテルと各国オリンピック委員会や選手チームとの間に入って調整し、宿泊や移動で選手を管理するノウハウを伝授する。ホストタウンが受け入れを断念すれば、代替自治体探しも請け負った。羽田空港からの選手団の移動も手掛ける。「二重三重の厳格な管理をしなければならない。コロナ前に想定した何倍ものパワーをかけている」。JTBのオリンピック・パラリンピック推進担当の大塚雅樹取締役はバブル死守に必死だ。

 コロナ禍前に描いていた五輪インバウンド特需の夢は砕け散った。JTBは、海外観光客向けの宿泊付き観戦ツアーや大会関係者の宿泊業務などで大きな収益効果が見込めるはずだったが、3月に海外無観客が決まり、規模縮小に伴い大会関係者も大幅に減る。

(写真=Stanislav Kogiku/SOPA Images via ZUMA Wire/共同通信イメージズ)

 「もうコンペする時間がない。感染症対策にご協力いただきたい」。五輪開催準備が加速した今春、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に打診された。事業で培ったイベントの安全運営技術を生かせると引き受けた。競技場周辺での動線、体温測定や消毒手順などの設計を支援した。

 「確かにビジネスチャンスはがたっと落ちたが、ホスピタリティー会社として感染対策で貢献できる。1964年の東京五輪は社会インフラがレガシーとなったが、東京五輪の最大のレガシーは感染対策となった。そう後世に語り継がれるようにしたい」。大塚取締役はこう前を向く。

最上位は1000億円規模に

 開催都市の重い財政負担から下火になった五輪は84年のロサンゼルス大会から民間資本の導入に大きくかじを切った。放映権料とスポンサーからの協賛金によって大会運営が成り立つようになり、巨大スポーツビジネスイベントへと変貌を遂げた。

大会経費の25%を協賛金が占める
●東京2020大会経費1兆6440億円の負担割合

 東京2020大会では国内スポンサーからの協賛金は3500億円となり、これまでの過去最高額を塗り替えた。さらに複数回の大会を支援する最上位スポンサーであるワールドワイドオリンピックパートナーからの560億円を加えると4000億円を上回り、大会経費1兆6440億円の約25%を協賛金で賄う。国の負担の13%(2210億円)を上回っており、いかに東京大会でスポンサーの存在感が大きいかが分かる。

 国際オリンピック委員会(IOC)と直接契約するワールドワイドオリンピックパートナー14社には、コカ・コーラ、ブリヂストン、トヨタ自動車、パナソニックらが名を連ねる。長期にわたって複数の大会を協賛する契約で、契約金は1000億円規模とみられる。これとは別に日本オリンピック委員会(JOC)側と契約するスポンサー67社にはゴールドパートナー、オフィシャルパートナー、オフィシャルサポーターの3階層がある。協賛金は明らかにしていないが、それぞれ約150億円、約50億円、約10億円と巨額だ。

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