家電業界のレジェンドの助言

 若かりしころの孫正義氏やスティーブ・ジョブズ氏に助言したことでも知られる佐々木氏は、ツインバードに「競合にない技術を持て」と指導。その際、勧めたのがFPSCだった。理論自体は約200年前からあるものの、非常に精密な加工技術が必要で、実用化のめどもおぼつかなければ将来の市場規模すらはっきりしない。だが、同社は教えに応え、FPSCの技術を持つ米企業に指導を受け、事業化を目指した。

 対照的に、当時、佐々木氏が長年身を置いた家電産業では大企業を中心に、FPSCのような“海のものとも山のものとも知れないが、いずれ大化けするかもしれない技術”の芽を自ら摘み取る行為が活発化していた。

 発端は80年代以降、米国から日本の大企業に持ち込まれた株主至上主義だ。株主代表訴訟が容易になり、四半期決算が義務化される中、多くの大企業は株主の目を意識し「短期収益主義」に移行。目先の利益が優先され、マザー工場や基礎研究など事業の長期的持続に必要な部分にはカネを流さなくなった。そう考えると、たとえ、FPSCの種を持つ大企業が別にあったとしても、研究対象にならなかった可能性が高い。

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この記事はシリーズ「大は小を兼ねない 中小企業 再編論の罠」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。