この記事は日経ビジネス電子版に『野心に欠けるソニーの顧客「10億人」計画、飛躍に足りないピース』(6月22日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』6月28日号に掲載するものです
純利益1兆円を通過点に、さらなる成長を模索するソニーグループ。顧客基盤10億人という計画を掲げるが、戦略は野心に欠ける。創造力も技術も備わった今、さらなる飛躍へ足りないピースは何か。

「スパイダーマン」や「メン・イン・ブラック」などのヒット映画を生み出したソニーグループの映画子会社、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)。本社を置く米カリフォルニア州カルバーシティーにいる特命チームが、映画関係者の注目を集めている。
「プレイステーション・プロダクションズ」。2019年春にゲーム子会社であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が立ち上げた。使命は家庭用ゲーム機「プレイステーション」で人気の自社制作ゲームタイトルを基に映画やテレビ番組を制作すること。SIEが主導する形で企画を立案し、SPEが実際の撮影を進めて映画館などへ配給する。
ゲーム作品の映画化は業界にとって長らく「鬼門」とされてきた。世界観を再現できなければ、ゲームファンの失望を招きかねない。今回のチーム発足を機に、SIEとSPEは過去の失敗の分析を含めて徹底的に議論。「物理的な近さもありシームレスに連携できる」。プレイステーション・プロダクションズのトップであるアサド・クズルバシュ氏は効果を語る。
発足から約2年だが、すでに10作の映画・テレビ番組制作が進行中だ。22年2月には人気のアドベンチャーゲーム「アンチャーテッド」の映画公開を控え、急ピッチで上映準備が進む。
「今後も『感動』の軸、感動の主体であるクリエーターとユーザー、『人に近づく』という方向性は変わらない」。21年3月期に初の純利益1兆円超えを達成したソニー。吉田憲一郎会長兼社長CEO(最高経営責任者)は、今後の成長戦略で、これまでの経営方針を継続していく考えを示している。
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