「顧客10億人」は長期ビジョン

ライバルの顧客基盤は強い
●ソニーグループが注力するエンタメ業界での勢力図
<span class="fontSizeL">ライバルの顧客基盤は強い</span><br />●ソニーグループが注力するエンタメ業界での勢力図
注:決算期はソニーグループが2021年3月期、アップルとウォルト・ディズニーが20年9月期、フェイスブックとネットフリックス、スポティファイが20年12月期。円の面積は各社が抱える顧客の数を表す。顧客数はソニーグループが21年5月時点、他は最新の決算資料から引用(アップルは20年1月の公表数値)。複数のサービスや製品の合算値の場合もある。株式時価総額は6月中旬のもの。1ドル=110円、1ユーロ=130円で換算
(写真=左:ZUMA Press/アフロ、右:Abaca/アフロ)
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 注力するのは、大黒柱に成長したゲームや音楽などのエンターテインメントだ。コンテンツなどのIP(知的財産)を増やし、DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)と呼ぶ顧客と直接つながる配信基盤を強化する。24年3月期までにM&A(合併・買収)などの戦略投資枠として2兆円以上を設定し、これらの分野に優先的に振り向ける。

 関係者を驚かせたのが、ソニーと直接つながる顧客の数を、現在の約1億6000万人から10億人に拡大させる目標だ。インスタグラムを含め月間30億人超とつながる米フェイスブックや、iPhoneを擁する米アップルなどには及ばないが、動画配信大手の米ネットフリックスの会員数2億人超を大きく上回る。吉田氏は「あくまでも長期的なビジョン」と位置付けるが、現状の6倍に高めるのは容易ではない。

 もっとも、戦略をひもといていくと浮き彫りになるのは「手堅さ」だ。顧客基盤拡大でソニーが狙うのはゲームやアニメ、地域ではインドなどニッチな領域。すでに4760万人の有料会員を抱えるゲームのネットワークサービスなど、土地勘のある分野を開拓する。

 ニッチ領域を拡大するための取り組みが、冒頭で示したグループ間の連携強化だ。特定のコンテンツだけでなく、映画、ゲーム、楽曲と横断的に展開して顧客満足度を高め、コアなファンから得る収益を最大化する。音楽事業会社では「鬼滅の刃」でアニメ制作から映画、音楽と多面的に稼ぐモデルを確立した。アニメ分野で昨年末、米配信大手クランチロールの運営会社を買収すると決めたのは、この戦略の一環だ。

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