今まで価格をつけられなかったデジタルコンテンツが高額で取引されるようになった。「人を介さない金融サービスを実現する」という構想に基づくサービスも支持を集める。仮想通貨の次として盛り上がる市場はただの新しい投機の場なのか、世界を変えるのか。
プロバスケットボール選手のダンクシュート動画に2300万円、ツイッターのつぶやきに3億円、デジタルアートには75億円──。2021年、NFT(非代替性トークン)と呼ばれる技術を使ったデジタルコンテンツの販売に多額のマネーが流れ込んだ。
NFTは、そのコンテンツと関連付けた「唯一無二」のデジタルデータの所有権を取引するものだ。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の歴史で磨かれたブロックチェーン(分散型台帳)技術の新しい応用先だ。
NFTには、これまで資産として捉えるのが難しかったデジタルコンテンツを資産化できる可能性をもたらした意味がある。絵画や彫刻といったリアルの作品であれば、実際にそれを所持していることが裏付けとなる。では、複製ができてしまうデジタルコンテンツの所有を何で裏付けるか。そこにブロックチェーンを応用したわけだ。需給で価格が決まる仮想通貨に対し、NFTではコンテンツに対する人気や将来見込まれる売却価格などから価格が決まっていく。
NFTへの注目を背景に、デジタルコンテンツのビジネスとは縁が薄そうな企業も参入してきた。「我々の最新のプリングルズ『クリプトクリスプ味』を紹介しよう」。3月18日、ポテトチップス「プリングルズ」の公式ツイッター上で、50個限定のNFTが発表された。バーチャルな商品で現物はないにもかかわらず、即日完売した。
取引価格が高騰して話題を呼んだNFTは海外発のものが多いが、国内でも期待が膨らんでいる。仮想通貨の取引所で実績があるコインチェックのほか、LINEやGMOインターネット、メルカリなどが続々とNFT関連事業への参入を表明した。
よく分かる用語解説3
NFT
ゲームのアイテムや画像などのデジタルコンテンツにひも付いた「証明書」のようなデータを発行し、証明書の所有権を取引できるようにする仕組みのこと。カナダ・ダッパーラボが、バーチャル空間で子猫を育てるゲームの利用者間で子猫のデータを取引できるように導入したのが始まりとされる。
NFTという言葉は「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略。「しるし」などの意味を持つトークンは、ブロックチェーンで管理するひとかたまりのデータ。ビットコインなどの仮想通貨の実体もトークンだ。仮想通貨では、あるトークンと別のトークンが持つ価値は同一で「代替性がある」とされる。貨幣や紙幣のイメージだ。これに対し、唯一無二のトークンであるNFTは作者直筆のサインのようなものだ。
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