毀誉褒貶(ほうへん)を受けながらも資産価値が膨張してきた仮想通貨。国家に依存しない通貨を夢見ていたが、値動きを最重要視する投機対象となった。どう歩み、どのように成長してきたのか。投資家たちの目を通じて振り返る。

仮想通貨への資金流入が続いた
●仮想通貨関連の主な出来事
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(写真=中:ロイター/アフロ、右:読売新聞/アフロ)
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 「もしかすると、国が管理する法定通貨より優れた資産なんじゃないか」。ビットコインなど資産10億円以上を保有する東京都の男性(38)は2014年ごろ、暗号資産(仮想通貨)についてこう考えるようになったと振り返る。

 世界最大級のビットコイン取引所を運営するマウントゴックスからビットコインが「消失」したニュースを見て、仮想通貨について検索したのがきっかけだった。仮想通貨をテーマにした集会があることを知り、「さぞや皆ひどい目に遭っているのだろうと、やじ馬根性でのぞきに行った」。

 予想に反して、会場は熱気にあふれていた。ビットコイン消失の事件を受けて未来を悲観しているような人は見当たらなかった。登壇した外国人がビットコインについて語っているのを聞くうちに、興味が湧き始めた。

 当時の日本は安倍晋三前首相と日本銀行が連携し、大量に日本円を増やす「異次元の金融緩和」の真っただ中。供給量が増えれば、相対的に円の価値は目減りする。景気回復にはインフレが必要との考えに基づく政策だったが、男性には「勝手に自分のお金をすり減らさないでくれ」と憤る気持ちもあった。国や銀行などの管理者がいないというビットコインの思想に共鳴した。

 試しに購入した日本発祥の仮想通貨モナコインが短期間で50倍まで値上がりし、仮想通貨に魅せられた。ビットコインなど複数の仮想通貨を購入してきた結果、一時は資産が最大20億円近くまで増えたという。足元の「バブル崩壊」で資産価値は目減りしたが、それでも「ビットコインの価格はまだ上がる。世間の潮が引いたときこそ買い時だ」と熱が冷める様子はない。

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