世界での存在感が低下し、衰退したといわれて久しい日本の科学技術。今を嘆くのではなく、20X0年を見据えた技術立国再生への処方箋を探る。
●日本の基礎研究分野の「ないない問題」と処方箋

今年2月、次世代通信として期待される量子インターネットの事業計画書が公表された。今後5年で試験基盤を設置し、10~15年後の実用化を目指すというものだ。監修したのは東京大学や慶応義塾大学、メルカリといった14の大学や企業から成る「量子インターネットタスクフォース(QITF)」。
代表を務めるメルカリの永山翔太シニアリサーチャーは設立の理由について「大学や企業が個々に研究するのではなく、日本の企業や研究機関が統合的に動くことが欠かせない」と話す。
光の粒「光子」を使って情報を運ぶ量子インターネットは、インターネットより安全かつ省電力とされる次世代の通信基盤だ。安全保障に関わる情報、新薬開発などで活用が期待されている。
QITFに関わるのは30~40代の若手研究者たちが中心だが、出会ったのは日本の著名な研究者が開催したサマースクールだ。こうした場で国内の研究者同士が出会い、「組織の垣根を越えて若手が集まり、基礎研究の討論が深まっていった」(永山氏)という。
だが、日本の研究現場では予算の余裕がなく研究者同士が交流する場が失われつつある。これまで量子インターネットの世界は日本がリードしていたものの、欧米や中国が大規模な投資を発表し、日本だけが有利とはいえない。
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