この記事は日経ビジネス電子版に『まさに「限界突破集落」 五島列島の秘境から無子化社会への提言』(5月17日)として配信した記事などを再編集して雑誌『日経ビジネス』5月24日号に掲載するものです。

「無子化時代」が訪れ、究極の人口減少社会になると、社会は今の形を変えざるを得ない。起きる可能性が高い変化は「一段の国際化」「究極の機械化」「人々の孤立化」だ。新たな環境の中で生きるため、個人と企業がすべきことを考える。

<span class="fontBold">神奈川県のいちょう団地では小学校の現場でも国際化が進んできた(旧校などの様子)</span>(写真=朝日新聞社)
神奈川県のいちょう団地では小学校の現場でも国際化が進んできた(旧校などの様子)(写真=朝日新聞社)

 無子化時代の到来に伴い、「国際化」「機械化」「孤立化」といった変化が仮に社会に起きた際、個人や企業はどうすべきなのか。それを知るには、まず3つの変化により社会がどう変わるかを把握することが欠かせない。その際、大きなヒントになるのが、「現時点で先行して国際化や機械化、孤立化の波に洗われているエリア」の実情だ。

 「おかえりなさい」「ただいまー」「石なんて蹴っていたら危ないよ」「はーい」──。

 4月下旬の平日、小田急電鉄江ノ島線の高座渋谷駅から歩いて15分ほどの距離にある「いちょう団地」。交差点でこんなやり取りをする、「横断中」と書かれた旗を持った高齢者と、元気に下校する小学生たちの姿があった。

<span class="fontBold">多言語の看板が各所に設置されたいちょう団地。国際化が進んだ団地はまだそう多くない</span>
多言語の看板が各所に設置されたいちょう団地。国際化が進んだ団地はまだそう多くない

 一見何の変哲もない光景だが、高齢者は日本人で、小学生の一定数は明らかに海外にルーツを持つ子供たちだ。路上脇に置かれた「バイク進入禁止」の看板は日本語だけでなく英語や中国語、ベトナム語、カンボジア語などが併記され、近隣にはアジア系の飲食店や食料品店が点在する。神奈川県大和市と横浜市にまたがるこの団地は、全世帯の約2割が外国系といわれ、国内でもいち早く国際化したエリアの一つだ。

国際化歴30年以上の“ベテラン”

 1970年代初頭に入居が始まり、当初は日本人がほとんどだった。が、大和市にベトナムやラオス、カンボジアの難民向けの「大和定住促進センター」が80年にできたのを機に、同施設で支援を受けた難民が80年代後半に続々と定住。近隣の厚木市や海老名市にある自動車関連会社に職を求める中国や南米の出身者も集まっていった。

 無子化時代になった際に起きる可能性が高い社会の変化の一つは、一段の国際化だ。国が今以上に海外から人を呼び寄せられれば、人口減少による市場縮小と人手不足を最小限にとどめることも理論的には可能になる。そうなれば、日本各地でいちょう団地のような場所が恐らく増える。その意味で、この国際化団地は「今から日本社会に起きる可能性が高い変化」の一つを先取りして体験した地域とも言える。

 では国際化がここまで本格化すると社会はどうなるのか。いちょう団地の実情を見る限り、少なくとも「無子化」に一定の歯止めはかかりそうだ。今も団地内の広場では子供たちが遊び回る姿を見ることができ、夕暮れ時でも住民の高齢化が進む他の団地にありがちな殺伐さなどは感じない。

続きを読む 2/6 むしろ「古き良き日本」が残る

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