この記事は日経ビジネス電子版に『ソフトバンク、営業のリモート化で商談数5倍に』(4月20日)などとして配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月3日号に掲載するものです。
新型コロナの感染拡大から1年余り。緊急避難的に始まったテレワークが定着期に。出社率2~3割を維持する先進企業は、当初気づかなかった利点を享受し始めた。柔軟な働き方はコスト削減だけでなく、業務プロセスや人事制度の改革まで誘発する。

ベルトコンベヤーの上を流れる赤いパッケージのシリアル食品「フルグラ」。カルビーの清原工場(宇都宮市)では、製造ラインの真横に工場スタッフが立ち、完成したフルグラを手に、製造工程を実況中継していた。“工場見学”の参加者とウェブ会議システムのZoom(ズーム)でつなぎ、クイズを交えながら、双方向の掛け合いで盛り上がった。

このオンライン工場見学は、同社が強力に推進してきたテレワークの延長線上にある。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、カルビーは2020年7月、新しい働き方「カルビーニューワークスタイル」を開始。オフィス勤務の社員は原則テレワークとし、5時から22時の間で自由に働ける「フルフレックス」を導入した。時間にも場所にも縛られない働き方で得たのは「あれも、これもテレワークでできる」という発見だった。
冒頭の「リモート工場見学」は20年11月に始めた。コロナ禍でリアルな工場見学は受け入れを停止したままだが、オンラインで先行して再開した。現在は「かっぱえびせん」を製造する広島工場(広島県廿日市市)、「ポテトチップス」を製造する北海道工場(北海道千歳市)を加えた3工場で開催している。
役員などによる社内の工場視察もオンラインに切り替えた。この他、新卒採用の1次面接を動画選考に本格的に移行。社員の家族を職場に招待する「カルビーファミリーデー」や、小学校への出張食育授業「カルビー・スナックスクール」もオンライン開催へとかじを切った。
東京駅に隣接する高層ビルの22、23階。約500人が所属するカルビーの本社は今、出社率20~25%程度で推移している。カルビーが難なくテレワークを実践できたのは、前提となる社内制度が整っていたからだ。
00年代初頭から経費精算や社内の稟議(りんぎ)決裁を電子化し、会議資料のペーパーレス化を推し進めた。10年の現本社ビルへの移転を機に、フリーアドレスを全国に順次拡大。14年に在宅勤務制度を始め、17年には利用日数や勤務場所の制限をなくした「モバイルワーク制度」を導入した。
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