コロナ禍で最大の問題となったのは医療の逼迫だった。民間中心で小規模病院の多い日本の医療体制はパンデミックに強くない。感染度に応じて柔軟に体制を変える仕組みが喫緊の、そして将来にわたる課題だ。

第4波が始まりそうな感染拡大で医療の現場にはまた緊張感が広がる(都内の病院)(写真=共同通信)

 「うちのマンションの価値が下がったらどうしてくれるんだ!」

 福岡市中心部の繁華街から西へ車で10分ほどの幹線道路沿いにある福岡記念病院。上野高史院長は嵐のように押し寄せてきた多数のクレーム電話が忘れられないという。

 昨年4月、看護師、患者、その家族ら30人を超える新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。防護服、医療用マスクは当然使用し、感染対策は万全だった。だが、どこからか感染が始まると、急拡大していった。

 年間約5500件もの搬送を受け入れる市内有数の救急病院だったが、その受け入れも一般外来もすぐに止めた。最初の感染者が見つかった時点で入院していた患者も退院を2週間延期。病院と外部との接触を最低限に抑え、徹底した対策を講じた。

 それでも感染拡大が伝わると周りは恐れ、クレーム電話の嵐に見舞われた。「福岡市の恥だ」とさえ言われた。

 約1カ月半、救急と外来の受け入れを止め、感染防止策をさらに強化して5月下旬にようやく再開を果たした。だが、病院経営が受けた打撃は大きい。病床数は約240の中規模病院だが、4月の収益(売上高に相当)は前年同月比で半減して大幅赤字に。6月まで前年比減収が続き、年間を通じても赤字となった。今年に入って例年並みに回復したものの、「油断はできない」と気を張っているという。

 コロナによって厳しい経営を余儀なくされたのは福岡記念病院だけではない。日本医療法人協会など病院3団体が昨年10~12月の会員病院の業績を調べたところ、コロナ患者を受け入れた病院では月を追って赤字比率が高くなっていた(上のグラフ参照)。医療機関は12月に賞与の支給で赤字になりやすいといわれる。賞与もコロナ患者受け入れ病院の場合、前年比などで減額になった医療機関の比率が、受け入れていない病院を含めた全体より約5ポイントも高い43.3%に上っている。「こんなに減額が多いのは初めて」(猪口雄二・日本医師会副会長)という。

続きを読む 2/4 入院先確保に3時間

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この記事はシリーズ「ワクチン最貧国 危機管理なき日本の医療」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。