この記事は日経ビジネス電子版に『日本は「途上国」、ワクチン接種開始で出遅れ鮮明』(4月16日)として配信した記事などを再編集して雑誌『日経ビジネス』4月26日号に掲載するものです。
4月12日、高齢者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。集団免疫への第一歩だ。大きな混乱はなく、打ち終えた人から安堵の声が上がる。だが、当初の供給量は少ない。変異株も広がり、むしろ不安は強まっている。



4月12日午前9時。東京都八王子市の市役所本庁舎1階で、高齢者へのワクチン接種が始まった。医師3人と看護師6人が対応し、問診を受けた高齢者の腕に注射針を刺していく。顔をゆがめる人は少ない。この日の対象者は250人ほど。接種を終えた人は15分間の経過観察のため椅子に腰かけていた。
この会場では同日、アナフィラキシーと呼ばれるアレルギー症状は出なかった。八王子市諏訪町の原村京子さん(80)は、「感染に注意することに変わりはないが、ワクチンを接種できて安心した」と笑顔をみせた。同市加住町の住職、赤塚良孝さん(74)も「仕事柄、よく人に会うので、早く接種をしたかった。それほど痛くなかった」と話した。
同日に全国のトップを切って接種が始まった東京都世田谷区や北九州市、北海道江別市などでも大きな混乱は起きていない。だが、ようやく始まった接種を通じ、経済規模で世界3位の日本がワクチンの対応で出遅れた現状が浮き彫りになっている。65歳以上の高齢者、3600万人に対し、4月末までに自治体に届くのは140万人分と必要量の4%弱にとどまる。
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