この記事は日経ビジネス電子版に『東京湾の「要衝」狙う謎の中国資本、治安当局も警戒』(4月14日)、『米中対立は第2幕へ 「東芝ココム事件再び」というリスク』(4月15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月19日号に掲載するものです

トランプ前政権が打ち出した中国ハイテク企業への禁輸措置をバイデン大統領が引き継いだ。「東芝ココム」のトラウマが残る日本の産業界には、バイデン政権に背く選択肢は事実上ない。そんな米国一辺倒の日本企業に中国は報復をチラつかせる。中国市場を失わない方策を探る。

 その売り出し中の土地は神奈川県横須賀市の港湾地区にあった。もう使われていない様子の建物がひっそりと立っている。治安当局者が「取引の行方を注視している」と教えてくれた売り地だ。

 建物に向かって「誰かいますかあ」と叫んでも返答はない。代わりに「ガンガンガンガン」と、鉄をたたくような音が一帯に響く。騒音が鳴る方向に目を向けると、数百m先に広大な工事現場が広がっていた。

中国資本が重要施設の周辺を買い進める
●横須賀市の港湾地区に集まる重要施設
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(写真=上:共同通信)
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怪しげな中国メーカー

 巨大なクレーンが林立し、ダンプカーが行き交う。2019年から建て替え工事が進む横須賀火力発電所である。23年の再稼働を計画する。24年には総出力が130万キロワットに達する予定で、約45万世帯の電力消費量を賄うことができる。大勢の暮らしを支える発電所を一望できる土地の購入を目指しているのは、ある中国メーカーの日本法人だという。

 この中国メーカーは、売り出し中の土地に工場を整備する計画を立てていた。だが用途規制で製品を生産できないことが分かると、横須賀市当局に説明していた使用目的を変えた。この不自然な方針転換が治安当局者のアンテナに引っかかった。治安当局者は、「中国当局の意向を受けて土地の購入に動いているのではないか」と警戒する。

 問題の土地は、中国当局にとり「戦略的要衝」とも言える場所にある。発電所を一望でき、有事には容易に攻撃を加えられそうだ。東京湾の出入り口となる浦賀水道にも接する。

 加えて横須賀市内には防衛関連施設が多数ある。自衛隊や米軍の無線通信が飛び交っており、電波の妨害や傍受にはもってこいだ。中国側にしてみれば、土地さえ取得できれば、市に説明する表向きの使用目的は何でも構わなかったのかもしれない。

 中国資本が食指を動かしているのは、横須賀火力発電所の隣接地だけではない。日本政府は全国的に警戒を強めており、3月下旬には、発電所や防衛施設の周辺、水源地、領海の起点となる「国境離島」など、安全保障上、重要な土地の取引を調査・規制する法案を国会に提出した。今国会で成立させて22年4月に運用を始める意向だ。

 治安当局者は、「土地取引の監視を逃れようと、中国側は不動産会社を買収し、会社ごと土地を手に入れ始めた」と話す。土地の取得を巡る日中の攻防が水面下で激しさを増している。

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