この記事は日経ビジネス電子版に『腐敗を暴き、米国をよくしたい 「Qアノンの女王」が語る信念』(4月13日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月19日号に掲載するものです

トランプ政権の誕生と同時期に、その4年後に世界を驚かす事件につながる、ある集団が生まれた。政府の腐敗を取り上げた「陰謀論」を信じてネット上で情報を拡散する集団、Qアノンだ。取材で出会った「Qアノンの女王」と呼ばれる人物。その素顔と集団が生まれた背景を探った。

(写真=トランプ氏:ロイター/アフロ、右:AP/アフロ)
(写真=トランプ氏:ロイター/アフロ、右:AP/アフロ)

 「ちょうど今、トランプ前大統領との素晴らしい会議を終えたところだ」

 トランプ氏の大統領時代に同氏のスピーチライターと大統領上級顧問を務めたスティーブン・ミラー氏は4月5日、自身のツイッターにこう書き込んだ。添えたのは、トランプ氏の「執務室」で撮影した1枚の写真だ。

 満面の笑みで座るトランプ氏の前の机には「国境の壁」建設を記念する盾が飾られ、後ろの棚には家族写真が並ぶ。トランプ氏の「執務室の必需品」として知られるコカ・コーラのボトルも机の上にあった。トランプ氏が今年1月に別荘のあるフロリダ州パームビーチに新設した「オフィス・オブ・ドナルド・J・トランプ」が、その場所だ。

 大統領選に負けた候補が自らホワイトハウスそっくりの執務室を作ったとあれば不可思議にも映るが、トランプ氏の支持を続ける政治家や元ホワイトハウススタッフ、何より全米のトランプ支持者にとって重要な意味を持つ。プロローグに登場したQアノン信奉者のバレリー・ギルバートさん(下の写真)はこう説明する。

<span class="fontBold">ニューヨーク市マンハッタンで生まれ育ったバレリー・ギルバートさんはQアノンの信奉者で、ハーバード大卒の女優・作家。1匹のイヌと2匹のネコとマンハッタン中心部で暮らす</span>
ニューヨーク市マンハッタンで生まれ育ったバレリー・ギルバートさんはQアノンの信奉者で、ハーバード大卒の女優・作家。1匹のイヌと2匹のネコとマンハッタン中心部で暮らす

 「トランプ氏は民主党の政治家たちが公表してほしくない腐敗の証拠をたくさん持っており、それを新しいオフィスに大量に持ち込んだ。それを公表する日は来る。もうすぐかもしれない」

腐敗を暴くのが使命

 Qアノンが登場したのはトランプ政権が誕生した2017年の10月ごろだといわれている。「米軍に潜入しているハッカー集団(1人という説もある)が中心となり、民主党の中核議員などの腐敗の証拠をつかんでは暗号を使ってネット掲示板やSNSで公表している」(ギルバートさん)とされ、その情報を信じて拡散する人たちをQアノンと呼んでいる。体系的な組織やリーダー的存在はないが、ネットで収集した情報を拡散することが国を正しい道へ導くと考えている。アノン(Anon)は、匿名を意味する「Anonymity」の略だ。

 その存在が広く知れ渡るきっかけとなったのが、今年1月6日に起きたトランプ支持者による米連邦議会議事堂の占拠事件だ。「Q」の文字を掲げる人が報道写真に多く残っている。

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