この記事は日経ビジネス電子版に『画像検索で商品を案内、あの日本企業も利用するアリババの技術』(3月29日)、『ユニクロ元幹部が仕掛けるアリババの「モノ作り」イノベーション』(3月30日)、『顔認証と音声認識で何でもできる アリババが提案する新しいホテル』(3月31日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月5日号に掲載するものです。

ECのイメージが強いアリババだが、実際にはその事業内容は多岐にわたる。デジタル技術を詰め込んだ新工場から物流、自動車、ホテルまで。中国経済の隅々に浸透するようになったアリババの実像とは。

<span class="fontBold">アリババ傘下の犀牛智造が立ち上げた迅犀(シュンシー)デジタル工場。注文を受けてから商品を製造する</span>(写真=ロイター/アフロ)
アリババ傘下の犀牛智造が立ち上げた迅犀(シュンシー)デジタル工場。注文を受けてから商品を製造する(写真=ロイター/アフロ)

 3年間にわたり秘密裏にアリババが進めてきたプロジェクトがようやく公開された。

 「迅犀(シュンシー)デジタル工場」。アリババ傘下の犀牛智造が運営する、新たなコンセプトの工場だ。

 杭州市内にあるれんが造りのおしゃれな外観の工場に入ると、ロボットが自動で大きな布を裁断している様子が飛び込んできた。棚にある布や糸などの在庫を搬送するロボットも動き回っている。

 縫製ラインをよく見るとミシン本体にディスプレーがついており、オペレーターが迷わずに縫えるようになっていた。案内してくれた担当者は「消費者から注文が入った時点で、その分だけ生産します」と説明した。多品種少量生産を迅速にこなすための工夫が、そこかしこに見て取れる。

 2016年にアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が提唱したコンセプト「新製造」。シュンシーデジタル工場によって、デジタルと製造を組み合わせた新たなモデルが、初めて目に見える形になった。IoTやビッグデータ、人工知能(AI)などの組み合わせで実現する第4次産業革命の優れたモデルケースとして、世界経済フォーラムの「ライトハウス」工場にも認定された。

 この工場は、ECサイトにおける消費者の注文をきっかけに生産を開始する。これはアパレルのような大量生産モデルをとってきた業界にとって、大きな意味を持つ変化だ。

 従来のアパレルの製造方法は2カ月から半年前に大量生産した衣料を売るというものだった。需要が予測を下回れば在庫を抱え、上回れば機会損失となる。作りすぎた商品はセール期間に値引きして売り、それでも売れなければ大量に廃棄するという悪循環が生じていた。だが、販売データを起点にして受注生産ができれば、アパレル業界が抱える悪循環から抜け出せる。

 犀牛の伍学剛・最高経営責任者(CEO)は「アパレル業界の在庫廃棄率は毎年3割を超える。オンデマンドで生産すれば、こうした問題を解決できる」と説明する。ピークに合わせた設備投資をしなければならず、それ以外の時期は生産能力を持て余すといった事態とも無縁になる。

 伍氏は、かつてユニクロでグローバルサプライチェーンを統括した経験を持つ。ただ、「アリババで自社ブランドを構築したり店舗を運営したりすることは考えていない」と言う。アリババのECサイトには大量の中小企業が出店している。多品種少量生産と相性の良い、こうした中小企業からの製造を受託し、裏方に徹する考えだ。

 3月にライブストリーミングに登場した伍氏は10万人の中小企業経営者などが視聴する中で、「最低注文数は100件から。7日以内の納品を実現している」とアピールした。

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