勝つ条件 2
顧客から目を離さない

<span class="fontBold">オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長自らが手本となり、顧客視点を社内に浸透させている</span>(写真=左:吉成 大輔)
オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長自らが手本となり、顧客視点を社内に浸透させている(写真=左:吉成 大輔)

 ネット通販サービスが拡大を続ける中で、今後のけん引役と見込まれる分野に生鮮食品の宅配がある。米アマゾン・ドット・コムの日本法人が20年、ライフコーポレーションと協業して23区など首都圏の一部から大阪へサービス範囲を広げた。イオンやイトーヨーカ堂もネットスーパーとして相次いで強化している。

 その中でも先行組として成長を続けているのがオイシックス・ラ・大地だ。有機・無添加食品やミールキットを扱い、20年4~12月期の売上高は747億円と前年同期比43%増えた。

 長い目で見ても、前身のオイシックスが創業してから20年間、着実に成長している。主力サービス「オイシックス」の会員数は、20年12月末時点で約28万5000人まで伸びた。

「ライバルは見ない」

 オイシックスが強い理由は、一言でいえば「顧客主義」。高島宏平社長は「参入企業が増えているが、ライバルの動向は見ない」と語る。重要なのは、多くの企業が顧客主義をうたう中で、オイシックスはしっかりそれを徹底できる仕組みを持っていることだ。

 取り組みの代表例が、旧オイシックス時代の15年から続く「お客様満足度向上委員会」。多ければ週に1000件以上寄せられる顧客の声を集め、商品やサービスを改善してきた。新型コロナウイルス禍の前であれば、顧客を会社に招いてヒアリング。招くことが難しい現在でも、ビデオ会議システムや電話で多い週には100件の声を集める。

 声を聞くのはマーケティングなど特定部署の担当者の役割ではない。商品開発、営業、さらにはアプリの開発担当までが直接、顧客と接する。単純にサービスへの不平不満を聞くのでなく、まず顧客が抱えているであろう課題に対する仮説を持つ。その上で「購入理由」「注文頻度やタイミング」などについて質問攻めにし、自社のビジネスに起きている変化を見極める。

社長自ら顧客インタビュー

 ニーズから目を離さなければ、やるべきことが見えてくる。実際に得た回答から生活スタイルを分析し、新たな商品やサービスにつなげている。ミールキットでは、主菜だけでなく副菜をラインアップに加えたり、時短できるように調理方法そのものを見直したりした商品が生まれた。

 高島社長自ら、時間の多くを顧客主義の文化の浸透に充てている。毎年、新入社員とともに野菜を買ってくれている消費者の家を訪問し、インタビューやキッチンを見せてもらうことで生活スタイルを学ぶ。こうして得た潜在的な課題から新サービスを議論することも欠かさない。

 「私が『これ不便だよね』と言っても変わらなかったのに、顧客から同じことを聞いたらすぐ変わったサービスもある」と高島社長は話す。

 同社は17年に同業の大地を守る会と経営統合、18年にらでぃっしゅぼーやを傘下に収めた。従業員は20年3月末で1688人に膨らみ「競合でなく顧客を見る文化を根付かせることが一層重要になる」(高島社長)。

 同じ分野で競合する以上、他社を無視することはできない。だが、違いを出そうとして戦う相手を研究することに熱心になりすぎると、ビジネスの意義を忘れたり、競合の製品・サービスに似通ったりするリスクが高まる。オイシックスの事例は、自分たちの商品を販売する相手をしっかり見る、それを継続する仕組みを築くことが競争力の源泉になると教えている。

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