サービスがデジタル化して参入障壁が低くなり、多くの企業が成長市場に押し寄せる。加速度的に赤く染まる市場に見切りをつけ、撤退する企業も出てきた。商品やサービスの「短命化」は、企業の収益モデルを崩しつつある。

「現在の事業環境に鑑み、経営資源を集中すべくサービスを終了させていただくこととなりました」
2月1日、NTTドコモはあるサービスを終了するリリースを出した。2014年5月に始めたフードデリバリーサービス「dデリバリー」だ。21年6月にはすべてのサービス提供を終える。
新型コロナウイルス禍で伸びた市場の一つがフードデリバリーだ。20年1月に初めて日本人の感染が判明して以降、外出自粛が本格化。4月には政府が緊急事態宣言を出し、全国で外出が制限された。在宅ワークの増加も追い風となり、利用は一気に増えつつある。
ドコモ、市場規模4割増も撤退
調査会社のエヌピーディー・ジャパン(東京・港)によると、20年の市場規模は6030億円の見込みという。19年に比べて44%増と急拡大した。市場が伸び盛りの今、なぜドコモは撤退の道を選んだのか。

ドコモのビジネスクリエーション部の田辺久美子課長は「なぜ今撤退なのかという声は社内にもあった」と苦しい胸の内を明かす。dデリバリーは表向きドコモのサービスだが、プラットフォームは国内フードデリバリーサービス古参の出前館のものを使っていた。その出前館との提携が終了するのを機に、サービス終了となったのだ。
ドコモを取り巻く環境は厳しさを増している。「官製値下げ」による競争激化で収益性が悪化するからだ。携帯各社は金融などのサービス拡充で、自社の経済圏を拡大しようともくろむ。フードデリバリーはそうした先兵になりそうだが「(独自で展開すると)すごくもうかるわけではない一方で、マーケティングコストはかかる。検討を重ねた結果、キャッシュレス決済などに注力してフードデリバリーサービスは一度終了することにした」(田辺氏)。
フードデリバリー市場の競争は激しさを増している。00年にサービスを始めた出前館や、16年に国内でサービスを開始した「ウーバーイーツ」を筆頭に、海外からの新規参入も相次ぐ。顧客の囲い込みを目指して各社が割引クーポンを乱発する消耗戦が続いている。
出前館の20年8月期の連結売上高は前の期比54.6%増の103億600万円と大幅な増収となったが、最終損益は41億1200万円の赤字(前の期の最終赤字は1億300万円)と業績が悪化。21年8月期は130億円の最終赤字を見込み、赤字幅は拡大する。
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