この記事は日経ビジネス電子版に『野口さんに届いた!個人が宇宙に挑む時代、下町ロケットを超えろ』(3月11日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月15日号に掲載するものです。

異業種や新勢力が宇宙産業をけん引するには、挑戦する人材が不可欠だ。しかし日本で宇宙機器産業に関わる人材は1万人未満。流動性も低く、層は薄い。宇宙人材を輩出する苗床をどうやって育てればいいのか。

 日本時間2月21日午前2時36分。米バージニア州のワロップス飛行施設からロケットが打ち上がると、米航空宇宙局(NASA)の中継をZoomで見守っていた日本の民間宇宙開発団体「リーマンサット・プロジェクト」のメンバーから大歓声が上がった。

 宇宙へ向かったのは、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届ける米ノースロップ・グラマンの「シグナス補給船」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実験装置や船外活動の備品などの物資の中に、リーマンサットが製造した人工衛星も積み込まれていた。

 リーマンサットの衛星「RSP-01」は立方体で1辺は10cmほど。アームを出して先端のカメラで衛星本体と地球を同時に撮影する「自撮り」衛星だ。自分たちが作った衛星が宇宙に浮かぶ姿を画像で確かめたいというアマチュア技術家の素直な気持ちと、衛星が故障する原因を究明する技術に育てられないかという思いがある。

 バージニア州を飛び立ってから40時間後、ISSに滞在中の野口聡一宇宙飛行士が補給船をロボットアームでつかみ、物資の回収に成功した。RSP-01は宇宙飛行士の手によって宇宙空間に放たれる予定だ。リーマンサットが自作して衛星に組み込んだ通信機で、地上との交信がかなうのかが試される。

<span class="fontBold">ISSのロボットアームが積み荷をつかもうとする瞬間の写真。この中に積み込まれていた自撮り衛星(左)はアームを伸ばして撮影する</span>(写真=宇宙空間:NASA)
ISSのロボットアームが積み荷をつかもうとする瞬間の写真。この中に積み込まれていた自撮り衛星(左)はアームを伸ばして撮影する(写真=宇宙空間:NASA)

 リーマンサットは2014年、宇宙好きの3人の会社員が新橋の居酒屋で「俺たちでも人工衛星をつくれるんじゃないか」と盛り上がったのが結成のきっかけ。一般社団法人も立ち上げ、今では会員が約850人に達した。小学生から会社員、70代のシニアまで多彩な顔ぶれがそろう。

 子どもが持つアンテナで衛星の電波を受信する「子ども衛星」や、抜けた乳歯を屋根より高い宇宙へ飛ばす「トゥース衛星」──。アマチュアらしい自由な議論から、自撮り衛星をつくってみようという結論にたどり着いた。

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