この記事は日経ビジネス電子版に『宇宙空間で一触即発、米国を本気にした中国の挑発行為』(3月8日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月15日号に掲載するものです。

探査機が月に、火星に到達した──。競うように成果を誇る米中両国。その裏で中国は、空や海と同じように、宇宙でも米国をけん制している。トランプ氏が掲げた宇宙軍は、バイデン政権下でも絵空事ではなくなっている。

米中ロの軍事闘争は宇宙にシフト
●米中ロ闘争の歴史
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(写真=ロケット:AFP/アフロ、スプートニク:Science & Society Picture Library/アフロ、中央上・中央下:ロイター/アフロ、軍の整列:United States Space Force)
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 「中国は東シナ海での周辺諸国に対するのと同じ挑発行為を宇宙で米国に行っている」。米戦略国際問題研究所(CSIS)のトッド・ハリソン氏は、宇宙での米中摩擦の現状をこう明かした。中国は衛星を米国の衛星に接近させるなど挑発行為を繰り返しているという。

 ニュースでは両国の「偉業達成」が次々に伝わる。2月には米航空宇宙局(NASA)の探査車が火星着陸に成功し、中国も火星の軌道に探査機を到達させた。2020年12月に中国は、無人探査機を月に着陸させ、土壌を持ち帰った。

 友好的な技術競争に映るが、宇宙での争いには知られざるもう一つの顔がある。他国の衛星に接近して自爆し、標的を破壊する「キラー衛星」に、レーザーなどで目標の機能を奪う「指向性エネルギー兵器」。こうした宇宙兵器を中国だけでなくロシアも保有し、イランやインドも開発に取り組んでいる。

 「平和だった宇宙を戦場に変えたのはモスクワと北京だ。我が国の軍事的優位性を奪おうとしている」。トランプ政権の元国防長官、マーク・エスパー氏は20年9月、中ロをけん制した。

 地上と宇宙の軍事力は切っても切れない関係にある。転換期は1991年の湾岸戦争だ。米軍のミサイルが軍事施設をピンポイントで空爆する映像が流れ、世界に衝撃を与えた。米政府の衛星群が、こうしたハイテク作戦を可能にした。特に2003年のイラク戦争以降は「全地球測位システム(GPS)」を使ったミサイルの活用も増えた。

 逆に言えば、衛星がなければ米軍が誇る作戦は結実しない。中ロはこの点に気付いた。巨費を投じて米国と同等の軍事力を持つよりも、宇宙の衛星を無力化したほうが手っ取り早い。中国は00年ごろ、ロシアは10年ごろから、米国が保有する宇宙システムを狙った宇宙兵器の導入に本腰を入れた。

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