脱炭素への取り組みが不足している企業に対する風当たりは強まるばかりだ。かつて世界をリードする環境技術を生み出した日本にはポテンシャルがある。国は技術とルールのイノベーションを通して、企業を引っ張っていく役割がある。

<span class="fontBold">米カリフォルニア州とネバダ州の間にある太陽熱発電所</span>(写真=Solent News/アフロ)
米カリフォルニア州とネバダ州の間にある太陽熱発電所(写真=Solent News/アフロ)

 脱炭素に真剣に取り組まない企業に対する風当たりは、年々増している。その最たるものが資金の出し手である投資家だろう。

 ESG(環境・社会・統治)を重視する運用大手や年金基金の間では、化石燃料業界からのダイベストメント(投資撤退)が相次いでいる。投資家団体「ダイベスト・インベスト」によれば、現在世界で1300以上の団体が、化石燃料からの投資撤退を表明済みだ。これら団体の運用資産を合わせると14兆ドル(約1470兆円)になる。

 対する日本はどうだろうか。地球の自然環境や社会に配慮するサステナブル投資の残高推移を見ても、日本の機関投資家は残高を伸ばしているものの、差は開いている状態だ(下グラフ参照)。

投資面でも日本の取り組みは遅れている
●世界のサステナブル投資残高の推移
投資面でも日本の取り組みは遅れている<br /><span class="fontSizeXS">●世界のサステナブル投資残高の推移</span>
出所:GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT ALLIANCE “2018 GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW”
[画像のクリックで拡大表示]

 一方の海外投資家はCO2排出量の多い化石燃料業界のみならず、他業種の取り組みにも目を光らせ始めている。

 「準備が迅速にできない企業は事業が停滞し、企業価値も低迷する」。8兆6800億ドル(約910兆円)の資産を運用する世界最大の資産運用会社、米ブラックロックは今年1月、投資先企業にこのような書簡を送った。今後はカーボンニュートラルに向けた事業戦略を開示するよう、投資先企業に求めることを発表したのだ。開示が不十分な場合は、株主総会で取締役に反対票を投じられる可能性がある。

 取り組みが進む欧州では、「ものづくりにどれだけのCO2排出コストがかかるか」「1トンのCO2を削減するのにかかるコスト(限界コスト)はいくらか」といった情報を企業は積極的に開示している。脱炭素に向けた戦略を「見える化」し、その進捗をアピール。ESGマネーを呼び込んでいる。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1308文字 / 全文2101文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「2050年目標の理想と現実 脱炭素は本当に可能か」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。