誰にでも「専門性」はある
では、どうしたらいいのか。人事管理に詳しい学習院大学の今野浩一郎名誉教授は、「大企業でしっかり長く勤めた人には必ず何か専門性がある。それを生かせばいい」と話す。
その専門性とは、管理職で培われたマネジメント力でも、現場で身に付けた職人的技能でもいい。大切なのは、今あるスキルと求められるスキルとのギャップを埋める努力をし、年功序列型の賃金で“過払い”の状況にあった報酬がスキルに見合った合理的な水準に下がることを受け入れることだ。
それができれば、社内だろうが社外だろうが、仕事は見つかる。足りないスキルを自ら学べば、製造業からサービス業といった業種を越えた再就職もできる。「生涯現役という働き方をするなら、一度ピークアウトして一兵卒としてがんばればいい。それができれば、年齢なんて関係なくなる」(今野氏)
とはいえ、いざ自らのスキルを棚卸ししようとすると、何をしたらいいのか分からないという人も多いだろう。リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長の宇佐川邦子氏は、「まずは情報をきちんと把握すること」と言う。
例えば、同じ管理職でも生産ラインの監督と新規事業を取りまとめるリーダーでは求められるスキルが大きく違う。一方、プロジェクト管理であれば、業種が異なっても共通点はある。業種や職種ではなく、個々の業務の特性に応じて仕事を探していくことが重要だ。
自分のスキルを明確にすると同時に、やらなければならないのが「スキルのアップデート」だ。社会や産業の構造変化に応じて、求められる人材の要件も変わってくる。社会人になってから60歳で定年を迎えるまでの約40年、その後も再雇用などで約10~15年働く時代が訪れようとしている。学び直しによる継続的なスキルの更新が必要不可欠だ。
ここでいう「学び直し」は、必ずしも大学や専門学校などでの高度なスキル取得を意味するわけではない。現在の職業スキルを起点に、自身の職業能力を1段階アップさせる小刻みな学びの繰り返しでいい。
5~10年先の世の中の変化を予測し、そのときに必要なスキルを今から学び直そうというのはハードルが高い。ならば、今起きている変化に対応するための新しい技術や手法を、日々の仕事や生活に取り入れてみる。それだって立派な学び直しだ。その蓄積が5年、10年後に大きなキャリアの資産となる。
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