この記事は日経ビジネス電子版に『定年後もバリバリ働け! タニタ、大和証券の「やる気」アップ作戦』(2月10日)として配信した記事などを再編集して雑誌『日経ビジネス』2月22日号に掲載するものです。
急増する高齢人材。タニタや大和証券はホワイトカラーの活性化に制度改革で挑み、セブンイレブンや丸亀製麺などサービス業は人手不足解消や接客向上の切り札と位置付ける。だが2030年以降に本格化するであろう人材過剰に、現在の延長で対応できるとは限らない。

健康機器大手のタニタ(東京・板橋)本社内の一角に、タニタ総合研究所という子会社がある。60歳でタニタを定年退職した25人がここで働く。出張手配や営業車のリース契約といった本社向けの事務仕事に携わる人もいれば、派遣社員としてタニタ本社内で働く人もいる。

「新しく趣味を始める人も多いですよ。肩の荷を下ろして和気あいあいと“スローライフ”を楽しんでいますね」とタニタ総研の今正人社長はいう。
今から11年前、タニタ総研は60歳で定年した後の再雇用の受け皿会社として設立。定年を迎えた社員の再雇用の受け皿として、子会社や関連会社を活用する会社は多い。特に大企業では、グループの規模を生かして再雇用者を子会社や関連会社が引き取るケースが珍しくない。
本社は組織の新陳代謝を図りたい。だが、将来の人手不足に備えるとともに、国が求める雇用延長にも応えなければならない。受け皿の会社を通じた再雇用には、その両立を図る狙いがある。だが、「もっと働きたい」という高齢人材を一律に受け皿会社で引き取るだけで、本当に彼ら・彼女らの能力を十分に引き出せるのだろうか。
8割が再雇用の道選ぶ
答えはノーだ。タニタでは毎年、定年を迎える社員の約8割がタニタ総研での再雇用を選ぶ。だが、スローな働き方ではもの足りない社員もいる。
「タニタ総研には行きません。個人事業主として独立します」
あるタニタ社員は定年直前、そんな決断を会社に伝えた。この男性は当初、60歳で定年を迎えた後はタニタ総研で働こうと考えていた。だが、2017年に会社が個人事業主制度を導入したことを受けて考えを改めた。
この制度は、個人事業主として独立した後もタニタと業務委託契約を結び、退職前に担当していた業務を受注できるというもの。そこに目をつけ、定年後を見越して個人事業主になろうという60歳手前の社員が出始めている。
個人事業主なら年齢に関係なく実力で勝負できる。現在、制度を利用するのは30代から60代までの29人で本社人員の1割程度。60歳以上はまだ2人と少ないが、同社の谷田千里社長は今後増えていくことを期待している。
さらに、谷田社長は、「個人事業主制度は上位2割の優秀な人たちを対象に考えたが、全体の底上げも期待している」と話す。一緒に働く同僚たちが個人事業主として独立していく姿を見て、「自分もできるかもしれない」と思う社員が増えてくれば、組織全体の活性化につながるというわけだ。
「将来、優秀な社員はこちらに来てくれなくなるかもしれませんね」。タニタ総研の今社長は冗談めかすが、タニタの谷田社長は「みんなが個人事業主になれば、総研はいらなくなる」と言う。
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