この記事は日経ビジネス電子版に『EV急増の欧州、元テスラ幹部に託す悲願の電池産業育成』(1月28日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月8日号に掲載するものです。
アジアからの調達を減らそうと、域内での電池の製造を急ぐ欧州。一方、自国で力をつけた中国勢が欧州へ次々と生産拠点を構えようとしている。電池は各国の思惑がからむ産業となっており、競争の行方は混沌としている。
2020年は欧州の自動車産業にとって転換点となった。新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、欧州自動車工業会によると欧州主要18カ国の新車販売は1080万台と前年に比べ24.5%減と統計開始から最大の落ち込み幅となった。
その一方、電気自動車(EV)の販売が急増。ドイツのEV販売台数は前年比3.1倍の19万4163台。英国は前年比2.9倍の10万8205台だった。独英では新車販売に占めるEVの割合が前年の2%程度から7%程度に急伸した。
●英国とドイツのEV販売台数

背景には需給両方の事情がある。需要側では経済対策として拡充されたEVの購入補助金がある。購入者はドイツで1台当たり最大9000ユーロ(約113万円)、英国で3000ポンド(約42万円)の補助を得られる。
供給側である自動車メーカーには20年から二酸化炭素(CO2)の排出規制が導入され、規制値を達成できない場合は罰金が科された。規制値をクリアするため、自動車各社のEVシフトは鮮明だ。仏ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は1月14日の中期経営計画の説明会で、EV「ゾエ」が欧州で最も販売台数が多いEVであることを強調し、「EVのリーダーになる」と語った。

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