この記事は日経ビジネス電子版に『「善行」は本心か題目か ユニクロ、3年で会社が変わった』(1月13日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月18日号に掲載するものです。

柳井正氏が「正しい経営」を掲げるファストリ内部で今、何が起きているのだろうか。経営者の題目は社員に浸透しないのが常だが、柳井氏の発言には自らの行動が伴う。外からの目を意識した邪心ではないのか。それとも本気で社会を良くしようとしているのか。

<span class="fontBold">ダウンを象徴としてサステナブル商品を手掛け、ロゴも作成(左)。2019年、東レとともに英ロンドンで構想を発表した柳井正会長兼社長(右下)</span>(写真=右下:永川 智子)
ダウンを象徴としてサステナブル商品を手掛け、ロゴも作成(左)。2019年、東レとともに英ロンドンで構想を発表した柳井正会長兼社長(右下)(写真=右下:永川 智子)

 「この商品は赤字でいいということはない。取り組み自体が持続可能でなければ意味がありません」。2020年9月、登壇したファストリ傘下のユニクロの担当者は、リサイクル素材によるダウンジャケットを発表した。価格は7990円(税抜き)。著名デザイナー、クリストフ・ルメール氏がデザインを手掛ける「ユニクロ ユー」の製品で、同氏の手による通常のダウンと変わらない価格帯だ。

 ユニクロが商品単体で利益を出せるとわざわざ強調したのは、使っている素材をアピールするため。“原料”は店舗で顧客から回収したダウンジャケット。取り出して洗浄したダウンを詰めており、「100%リサイクルダウン」として売り出した。

 「コロナ禍を経て、お客様の持続可能な成長に対する意識が飛躍的に高くなった」(ソーシャルコミュニケーションチーム)。このダウンを発売した11月には欧州を新型コロナウイルスの第2波が襲った。多くの国でロックダウン(都市封鎖)が実施されたにもかかわらず、「EC(電子商取引)だけで、店舗計画と合わせた数量が欧州で売れた」(ユニクロのメンズMD部・ウィメンズMD部部長の田中敦氏)。滑り出しは好調だ。

 資源の枯渇に対処するサステナビリティー(持続可能性)の取り組みは普遍的価値として誰もが賛同するだろう。しかしサプライチェーンが未確立のリサイクル素材を使えばコストがかさむ。ダウンジャケットのリサイクルにこの規模で取り組むのは世界でも例がない。

 しかもファストリは利益を確保しながら通常品と同じ価格帯で売り出した。6年前からの取り組みが実を結んだ。

ごみではないという確約

 PART2でも紹介した戦略的パートナーシップを結んでいる東レ。ファストリとのビジネスを200人以上が担当し、多くの社員を出向させている。14年、ファストリに常駐した大川倫央GO事業第2室長は、国内で羽毛メーカーがリサイクルに取り組んでいる事例を見つけた。

 ダウンは焼却処分すると温暖化ガスの排出量が多く食用の副産物とはいえ水鳥の羽毛を使う。リサイクルを取り入れたいと考えた大川氏が詳しく調べてみると、そのメーカーは回収した衣類から人手でダウンを取り出していた。

 これではコストがかさんでしまう。一度は諦めたが、東レで製造機械の開発を手掛けるエンジニアリング開発センターに相談してみた。自動でダウンを取り出し、洗浄する工程まで担う機械を自前で用意できれば、採算が合うかもしれない。

 同センターが試験を重ねると、集めた衣類の裁断、送風の方法を工夫することによって、生地や糸くずなどと羽毛をより分けられることが分かった。裁断に炭素繊維の生産技術を転用するなど試行錯誤を重ね、18年に試作機を完成させて自動化のめどをつけた。

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