本社。この言葉からあなたはどんなイメージを浮かべるだろうか。社長がいて、会社の権力が集中した中枢で、1つしかない場所。そんな常識が覆されようとしている。そこから見えるのは新たな会社の在り方だ。

 2020年12月2日。東証1部に上場するソフト開発のアステリアが、東京・品川の本社で「おはらい会」を開いた。本社スペースを半減することに伴い、10年以上お世話になったオフィスに感謝の意を表したものだ。神主の言葉に合わせ、平野洋一郎社長らが神妙な面持ちでこうべを垂れていた。

<span class="fontBold">おはらいに合わせ頭を下げるアステリアの社員たち。右列一番手前が平野社長。役目を終えたハンコにもおはらいが行われた(右)</span>(写真=2点:的野 弘路)
おはらいに合わせ頭を下げるアステリアの社員たち。右列一番手前が平野社長。役目を終えたハンコにもおはらいが行われた(右)(写真=2点:的野 弘路)

 オフィスビルの1階と10階のうち10階を解約、本社の広さは1140m2から530m2に半減する。賃料は年間で約5000万円浮くという。残る1階のオフィスもミーティングルームが並ぶだけ。平野社長の席もなくなった。

 コロナ禍でアステリアも働き方を大きく変えた。95%の社員がテレワークで、商談も9割以上がオンライン化、セミナーやイベントは100%オンラインになった。にもかかわらず業績は最高益を更新中とあって「テレワークから戻す理由がない」(平野社長)。

 閑散とした本社スペースを半減させることを決めたが、狙いはコスト削減だけではない。平野社長は「オフィスの定義を変えた。必要な時に必要なだけ使うもの」と割り切った。

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