この記事は日経ビジネス電子版に『えっ、ワクチンにも死角? 日本のコロナ禍が2021年に収束する条件』(12月15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月28日・2021年1月4日合併号に掲載するものです。
第3波の襲来もあって依然、混乱と暗いムードに包まれる2020年の日本の年の瀬。だが専門家の間では、最悪の状況は21年に「底を打つ」との指摘も少なくはない。コロナ禍の行方から経済環境、流行まで“正念場の1年”を展望する。

世界に大きな打撃を与えたコロナ禍の打開に向け、光明が見えつつある。英米などで市民へのワクチン投与が徐々に始まっている。日本も接種体制の整備に動き始めた。2021年、日本と世界は果たして新型コロナの感染拡大という悪夢にピリオドを打てるのか。
米ファイザーとドイツ・ビオンテックが共同で開発しているワクチンと、米モデルナのワクチンが、21年を前に何とか実用化にこぎ着けた。

米食品医薬品局(FDA)は20年12月に両グループのワクチンにそれぞれ緊急使用を許可し、医療関係者などへの接種を始めた。両グループは、欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)にも条件付き承認を申請している。英国は一足先にファイザーのワクチンについて緊急使用を認め、12月8日から接種を行っている。
両グループのワクチンは、どちらもメッセンジャーRNA(mRNA)という、これまでに実用化された例のない物質を用いている。それだけに安全性に対してより慎重を期すように求める声は多いが、それぞれ数万人規模の臨床試験を実施し、90%を超える高い有効性を示す一方、安全性に大きな問題はなかったことを発表している。
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