この記事は日経ビジネス電子版に『トヨタとフェイスブックが落ちた罠、ウッズ氏は日本流謝罪で成功?』(12月9日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月21日号に掲載するものです。
言い訳せずにひたすらわびる者を潔いとする価値観は日本固有ではない。謝罪を避けがちな訴訟大国・米国でも日本流の陳謝に救われた者がいる。謝罪の歴史を振り返り、「米国の流儀」に対する誤解を解こう。
日本と違って米国はドライな国。企業が不祥事を起こしても謝罪会見を開かないし、まして法的責任を問われる恐れがある問題で、経営者は軽々に謝らない──。そんなステレオタイプにとらわれたまま、米国市場に進出していると、米国市民から手痛いしっぺ返しを受けかねない。
トヨタ自動車が10年前に米国で痛い目に遭ったのも、「訴訟大国なので、法的なリスクの回避を優先するのが得策だ」との先入観から抜け出せなかったからかもしれない。
アクセルの不具合が明らかになり、全米でトヨタに対する非難の嵐が吹き荒れたのは2010年だ。豊田章男社長が米議会の公聴会で責任を追及される前に少しでも騒動を沈静化すべく同年2月2日、米トヨタ販売会社の社長名で全米各紙に謝罪広告を載せた。
だが広告で「心から申し訳なく思う」としたのは、「リコールでご心配をかけたこと」に対してだ。肝心の不具合についての謝罪はなかった。
米PR会社ホフマンエージェンシーのルー・ホフマンCEO(最高経営責任者)は、「経営陣が弁護士の助言を丸のみにして保身に走ったのだろう。これでは米国人の怒りは収まらない。経営陣は法的リスクを軽減しつつも、心から謝罪するために妥協点を見いだすべきだった」と言う。
Powered by リゾーム?