経営の停滞や危機に学び、自らの強みを見つめ直した日立と東芝。事業の入れ替えは進んだが、目指す姿の実現には足りないものがある。行き着いたのは「人」だ。新しい事業で勝ち抜くため、最も難しい課題に挑む。
日 立
世界のインフラの「ご用聞き」へ
工作機械大手、オークマの工場(岐阜県可児市)。最新鋭の部品工場に30代の日立製作所社員が足しげく通っている。2006年に日立に入社した産業FAソリューション部主任の後藤知明氏だ。工場内では、従業員の動きを撮影するカメラを設置したり、タグやセンサーで材料や部品の動きを監視するシステムを調整したりしている。

工作機械に使われる部品を加工するこの工場は、典型的な「多品種少量」生産。管理が行き届かなければすぐに効率が悪化してしまう。オークマ自身、工作機械の稼働データに基づいてボトルネックとなる機械は特定できていたが、どんなときに、なぜ効率が悪化するのかの詳細な判別はできていなかった。そんなオークマの懐に飛び込んだのが日立だった。
後藤氏らの担当チームは、オークマの課題を聞き取り、工場内のモノの動きや機械の動き、人の動きなどのデータを分析。日立の研究所の協力を得ながら、作業員のシフトや、素材を加工ラインに配備するスケジュールなどに課題があることを突き止めた。
オークマに提案したのは、効率が低下した原因を示して操業の改善に生かしてもらうシステム。そのために、効率低下の原因を自動で判別するための独自のルールを編み出した。後藤氏は「データ収集の必要性は広がっているが、一つひとつのデータだけではやれることは限られる。横串を刺すと見えるものがある」と話す。オークマとの協業で得たノウハウを中小規模の工場でも活用できるようにする取り組みも進めているという。
根幹は「ルマーダ」でなく人材
日立が中核に定めた「社会イノベーション事業」は、こうした作業の積み重ねだ。工場や交通、エネルギーシステムなど人の生活を支える社会インフラを手掛ける顧客企業に対して、「ご用聞き」としてインフラをより良くするための解決策を提示し、それを実際に組み上げて実行する。自社のモノを売ることにはこだわらず、顧客や社会に提供できる価値で勝負する。
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