経済成長が覆い隠してきた社会や経済の亀裂を新型コロナは顕在化させた。タイでは反体制デモが激化し、インドネシアでは暴動が発生している。新型コロナという“増幅装置”がもたらした社会不安を、各国はどう乗り越えるのか。

<span class="fontBold">10月16日、機動隊がデモを強制排除した。この日を境に衝突が徐々に激化していく</span>(写真=AP/アフロ)
10月16日、機動隊がデモを強制排除した。この日を境に衝突が徐々に激化していく(写真=AP/アフロ)

 「アイヒア トゥー!(プラユットはくそ野郎だ!)」「オーク パイ!(出て行け!)」。9月以降、タイでは頻繁に反体制デモが開かれ、こうしたシュプレヒコールが響き渡るようになった。

 デモが批判するのは軍政時代から実権を握るプラユット首相だけではない。その対象はタイで絶対視されてきた王室にまで及ぶ。極めて異例の事態だ。

 タイで王室の名誉を傷つけることはタブーとされ、不敬罪に問われる恐れもある。だがデモの参加者は意に介さず、抜本的な王室改革を要求し始めた。1950年代末、開発独裁の時代に確立した、王室を頂点とするタイの統治システムが揺らいでいる。

自殺者数は22%増

 亀裂は深まっている。10月16日にバンコクで開かれたデモでは警官隊と高圧放水車が投入され、参加者は強制排除された。放たれた水には薬剤が含まれていたとみられ、浴びると目や喉がピリピリと痛む。11月17日には国会議事堂近くでデモ隊と王室支持派、警官隊との間で衝突が起きた。催涙弾なども使用され、少なくとも50人以上の負傷者が出た。現地報道によれば銃撃を受けた者もいるという。

 なぜ今、デモが活発化しているのか。筑波大学の外山文子准教授は「新型コロナが引き金の一つになっている」と指摘する。

 タイは新型コロナの抑え込みには成功したものの、封鎖措置や観光需要の急減を受けて経済は大きく低迷した。観光業では職場を追われる人も多く、屋台などで日銭を稼ぐ零細事業者の生活も苦しくなるばかりだ。保健省によれば2020年1~6月の自殺者数は前年同期比で22%増えた。

 タイは経済的、社会的格差が激しい国として知られ、一握りの裕福な人々が富の5割を独占しているといわれる。経済成長が覆い隠してきた格差の現実を、新型コロナは暴き出した。「新型コロナで国は大変なことになり、多くの人が苦しんでいる。今こそ国の在り方を変えないといけない」。あるデモ参加者はこう話す。

 彼らにとって、国の頂点に君臨する王室は格差を象徴する存在に映る。「国民の財産を取り戻そう」。11月25日に開かれた大規模デモでは、王室が抱えているとされる莫大な資産について批判する声が上がった。

 もっとも、プラユット首相も国会も王室改革には背を向けている。さらにプラユット首相は11月19日、より厳しくデモに対応していく方針を示した。カシコン・リサーチ・センターのシワット・マネージングディレクター代理は「デモが過激化して軍隊が出動したり、戒厳令が出たりする事態になれば、経済に深刻な影響が出る」と危惧する。

続きを読む 2/4 低迷続くインドネシア経済

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